『ゼロの焦点』は中谷美紀の“目力”にビビる!
ミステリー界の巨匠・松本清張の傑作小説を、気合いたっぷりに映画化した『ゼロの焦点』(11月14日公開)。広末涼子、中谷美紀、木村多江という日本の映画界をけん引する女優陣の演技合戦が素晴らしい。中でも度肝を抜かれたのが、中谷美紀の“目力”の吸引力だ。
監督は『ジョゼと虎と魚たち』(03)、『眉山 びざん』(07)の犬童一心で、3人の女優陣から三者三様の“色”を見事に引き出した。
女優陣が体現するのは、激動の戦後、昭和30年代を生きた女たち。広末は、失踪した夫・憲一の足取りをたどる妻・鵜原禎子役、中谷は憲一の得意先である会社の社長夫人・室田佐知子役、木村多江はその会社の受付嬢・田沼久子役に扮する。犬童監督は、広末に“素”、中谷に“麗”、木村に“優”というイメージを当てはめて演出していったと言う。
この中谷による“麗”の熱演が白眉だ。
社長夫人ならではのゴージャスなドレスが、彼女の美しさをより一層際立たせる。何よりも目鼻立ちのくっきりした美ぼうは、松本清張のクラシックなテイストのミステリーにはもってこい。犬童監督もそれを分かった上で、あるシーンでは彼女の顔をドアップに映し出す。まさに“目力”全開! 思わず「ひえ〜!」と、吸い込まれそうになる。
『嫌われ松子の一生』(06)で2007年日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した中谷だが、本作はそれに値するくらいの熱演ではないか。ぜひ大きなスクリーンで“目力”を感じ取って。【Movie Walker/山崎伸子】
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