元々は人間だった!欲望にとらわれた美女妖怪・戸隠の鬼女【妖怪大図鑑】
勇者に選ばれた少年と個性豊かな妖怪たちが巨大な“妖怪獣”に立ち向かう、大人から子どもまでドキドキしながら楽しめる、夏休みにぴったりの映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』が現在公開中だ。この連載「妖怪大図鑑」では、本編に登場する妖怪&人間たちを一挙に紹介。映画の予習にはもちろん、映画を観たあとに気になったキャラクターのトリビアまで丸わかり。ちょっとコワくて、どこか憎めない、お気に入りの妖怪を探してみよう!
『妖怪大戦争 ガーディアンズ』は、伝説の妖怪ハンターの血を引く気の弱い小学生、渡辺ケイ(寺田心)が廃校の神社で赤いおみくじを引いたことから始まる物語。フォッサマグナから現れた巨大な“妖怪獣”を倒すため、勇者を待ち望む妖怪たちの世界へ導かれていくケイが冒険のなかで出会うのは、見た目も個性も様々な妖怪たち。ケイと妖怪たちは妖怪獣に対抗するため、最終兵器“大魔神”を復活させることに。
第40回:戸隠の鬼女
今回紹介する戸隠の鬼女は、長野県戸隠山に伝わる鬼妖怪。“鬼女”とは鬼に化けた女性のことであり、この戸隠の鬼女も元々は紅葉という名の美女だったが、欲望にとらわれ鬼になったとされる。室町時代に成立した謡曲「紅葉狩」では、平安時代の武人である平維茂が鬼女を退治するという内容が描かれている。しかし戸隠山には古くから鬼が棲むという言い伝えはあるものの、物語自体は創作なのだとか。「紅葉狩」は後に歌舞伎となり、公演を記録した映画が1899年に制作。そのフィルムは現存する日本最古の映画として2009年に重要文化財に指定された。
本作では日本の妖怪たちの仲間として登場。妖怪の世界に迷い込んだばかりのケイがドアを開けた際に、背後にぼんやりと立っている。“鬼”ではあるが、茨木童子たち鬼の一味に入らないのは、ルーツや性格の違いなのだろうか。ちなみに戸隠の鬼女のルーツである戸隠山は、本作の重要なカギとなる“フォッサマグナ”のエリアにあり、太古は海の底であった。そこから30万年前ごろまでの間に、大地の隆起などによって山が形成されたとされている。
もしかすると、妖怪、鬼、妖怪獣とすべてにつながる重要な妖怪なのかも…。『妖怪大戦争 ガーディアンズ』では、見た目とは裏腹に心優しい妖怪とも言われる、戸隠の鬼女にも注目してほしい!
文/久保田 和馬