三池崇史監督が明かす、神木隆之介と寺田心、2人の“天才子役”の共通点とは?
「若い俳優を演出する際には、『子役みたいな芝居をしたら許さないよ』と言います(笑)」
神木や寺田は、いずれもオーディションで主演という大役に抜擢されたが「その時代とカチッと歯車が合う子たちは確実に存在しますし、実際に彼らを演出していると、なぜ主演に選ばれたのかという理由が、だんだんわかってきます。彼らは現場で、求められる本来の力を発揮できる人たち。それは運命というか、そういう定めにある人たちで、頑張ってつかんだ主役ということではないんです。もちろん彼らも頑張って努力してはいるけど、頑張る前にすでにつかんじゃっている点が、普通の子役とは違います」という三池監督。
では、寺田を演出する際に気をつけたポイントなどはあるのだろうか。仮に彼らが役を作り込み過ぎた場合、そこを削ぎ落とすような作業をするのか?と尋ねると、三池監督は「若い俳優、いわゆる子どもたちを演出する際に僕はいつも言います。『子役みたいな芝居をしたら許さないよ』と」とおちゃめに笑う。
「やっぱり彼らは、感じ取る力が動物に近いので、そう言うとすぐに理解してくれます。特にアクションシーンだと、カットがかかり芝居を終えた瞬間に、監督やカメラマンがどういう反応をするのか、録音部がどんな感じなのかと、全部ひっくるめて冷静に読み取ろうとするので、僕がジロッと彼らを見るだけでそこも伝わります」。
さらに「そもそも“子役”と言われる彼らは、仕事という意識があまりないんじゃないか」とも捉えている。「もちろんプロですが、大人の俳優たちとは違う意識で参加しているので、現場はおもしろくて楽しい場所であり、そこで自分が能力を発揮することで周りに喜んでもらえることがうれしいんです。誰しも小さいころ、自分がやったことで、親やおじいちゃんおばあちゃん、親戚が笑ってくれると、幸せを感じるのと同じですよね」。
三池監督は、寺田を“妖怪”と表現した理由をこう述べる。「俳優さんは誰しも妖怪チックなところがあるんですが、『妖怪大戦争』シリーズのようにそれなりの予算をかけてやる大作で主演を張るには、彼らを見ていて『妖怪はきっといる』と信じたくなるような説得力が必要だと思っています。そういう意味で、彼ら自身がすごく妖怪っぽいし、すてきな力を持っている。でも、だんだん成長していくと、その能力がなくなっていくというのは、前作『妖怪大戦争』のテーマでもありました。要するにやがて彼らも忖度する大人になっていくということです」。
神木は『妖怪大戦争 ガーディアンズ』にも教師役として出演しているが、三池監督は「現在28歳になった隆にとって、自分の主演映画『妖怪大戦争』がどんなふうに見えているのかはまったく分からない。小学生だった隆や心くんも10年経てば大人になり、あの年齢特有の魅力はもう出せなくなることは当時の僕もわかっていたわけです。だからこそ監督としては、できるだけ本人たちにとって、宝物になるような作品を撮りたいという想いはありました」と優しい眼差しを向ける。
「これを言うと、映画関係者には怒られちゃうかもしれないけど、実は自分が子どもたちと映画を撮る本当の目的は、そこにあります」と告白。「僕は、役者を映画のなかの道具的には見られない。それはほかの作品でも言えることですが、この作品をやって良かったなあと、彼らに思ってもらえるような現場にしたいんです。できあがったものに対する評価よりも、隆や心くんが役者になって良かったと少しでも思ってもらえることのほうが重要です。実際に、そういう目的で作ったほうが作品も良くなる気がします」。