ジョニー・デップ、『MINAMATAーミナマター』製作に感じた責任とコロナ禍の“分断”を熱弁

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ジョニー・デップ、『MINAMATAーミナマター』製作に感じた責任とコロナ禍の“分断”を熱弁

ジョニー・デップが製作と主演を務めた映画『MINAMATAーミナマター』(9月23日公開)のオンライン記者会見が9月2日に開催され、ジョニーとアンドリュー・レヴィタス監督が出席。ジョニーが「特別な作品をつくっているということは自覚していた」と本作への想いを明かすと共に、コロナ禍で社会の分断が進むなか、“誰かに想いを馳せること”の大切さを語った。

『MINAMATAーミナマター』のオンライン記者会見が開催された
『MINAMATAーミナマター』のオンライン記者会見が開催された

水俣病の存在を世界に知らしめた写真家ユージン・スミスとアイリーン・美緒子・スミスが、1975年に発表した写真集「MINAMATA」を基に映画化した本作。報道写真家として功績を評価されながらも心に傷を抱えたユージン(ジョニー)が、当時の妻アイリーン(美波)とともに水俣を訪れ、人々の日常や抗議運動、補償を求めて活動する様子を写真に収めていく濃密な日々を描く。

フランスからリモートで参加したジョニーは「いま世界中が、厳しい局面を迎えている。同じ部屋にいて目と目を合わせて、皆さんと一緒にいることができない。そういった日々を懐かしむとともに、与えられた環境でベストを尽くしたい」と、コロナ禍において来日が叶わなかったさみしさを滲ませながら挨拶。ニューヨークからつながったレヴィタス監督も「日本が大好き。日本を舞台にした映画を作れたことに、感謝の想いでいっぱい」としみじみと話していた。


【写真を見る】ジョニー・デップ、『MINAMATAーミナマター』について熱弁!
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水俣の実話を描く映画で製作と主演を務めたジョニーだが、「この映画にプロデューサーとして参加することにまったく迷いはなかった。これは作られるべき映画だと思った」とキッパリ。「水俣病で多くの人が苦しんだ。そして、いまも世界中で同じようなことが繰り返されている。さらに私たちはいま、ウィルスと戦争をしている状況。私たちはいま、見えない敵と戦っているわけです。そういった意味でも本作は、この時代に観てもらうべき作品。水俣の皆さんが辿ってきた軌跡と共に、企業の腐敗が存在しうること、それが見逃されるならば蔓延ってしまうという事実を伝えたかった」と力を込めた。

続けて「特別な作品を作っているということは自覚していた。ユージンの生きてきた証を演じるという、責任感も感じていた」と本作、そしてユージン役への並々ならぬ想いを明かしたジョニー。レヴィタス監督は、アイリーン本人とも対面したそうで、「ジョニーの献身やアーティスト的な頭脳も、ユージンと似ている。アイリーンは、『ユージンの目にはいつも希望の輝きがあった』と言うんだ。そして人に寄り添う気持ち、愛が見えるとも言っていた。ジョニー、君はまさにそういう面を持っているよ」とジョニーとユージンの共通点を吐露。「どんな状況でも、スクリーンからそういうものほとばしる。希望や状況がよくなってほしいというジョニーの願いが、本作にも反映されているんだ」と称えると、ジョニーも笑顔を見せていた。

手を合わせて感謝を伝えた
手を合わせて感謝を伝えた

また本作には日本の俳優陣も出演しているが、ジョニーは「真田さんはオフの日にも毎日現場に来る。エキストラの演技を助けたり、若手の俳優の指導もしながら、集中力を失わない。感動を覚えた。彼は他人のために行動する人だ」と真田広之に感謝しきり。スタッフ、キャスト陣が全力を注ぎ、重大なメッセージを伝える本作に携わったことで、ジョニーは「自分の情熱がさらに深まった」という。

化学と医療、政府の関わり合いを描く本作を通して、ジョニーはコロナ禍で失ったものにも想いを馳せたという。「コロナ禍において、世の中の分断や孤立がさらに加速した。困っている人たちがいたら、立ち止まって手を差し伸ばす…ということすら、危険に感じることがある。政府は都合のいいことしか伝えず、さらに分断が進んでいる」と口火を切り、「この映画では、腐敗が露見することで、人々が動くことが描かれている。小さな漁村でそれができたならば、ほかの多くの場所でもそれが可能なのではないか」と持論を展開。「誰かを助けることができないか、自分にできることがないだろうかと、日々のなかで1分だけでも、数分だけでも費やして、ほかの人のことに想いをはせてほしい。本作が、視野を広げ、想像力を働かせるきっかけになれば」と願っていた。

取材・文/成田 おり枝

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