『レミニセンス』リサ・ジョイ監督と夫ジョナサン・ノーランが語る、夫婦での映画作りの秘訣
クリストファー・ノーラン監督作「ダークナイト」シリーズや『インターステラー』(14)などの脚本を手掛けてきた弟ジョナサン・ノーランが、妻リサ・ジョイの劇場監督デビュー作『レミニセンス』(公開中)をプロデュース。大ヒットドラマ「ウエストワールド」に続く夫婦タッグ作となったが、2人はどのようにお互いを見ているのか?リモートで2人を直撃し、撮影秘話だけではなく、公私共に固い絆で結ばれたパートナーシップについても話を聞いた。
舞台は、海に沈んでしまったとある都市。人の記憶に潜入(レミニセンス)し、それを360度の空間映像に再現するという「記憶潜入エージェント」の男が、国家規模の陰謀に巻き込まれていく。エージェントのニック役をヒュー・ジャックマンが、彼にとってのファムファタールとなる謎の女性メイ役を、ジャックマン主演映画『グレイテスト・ショーマン』(17)でも共演したレベッカ・ファーガソンが演じた。
「リサの強みは怖いもの知らずなところと、作品を作ることにおいて完全なビジョンを持っているところです」(ジョナサン)
――主演のヒュー・ジャックマンは、リサ・ジョイ監督からくどいたそうですが、実際に彼を演出してみていかがでしたか?
リサ・ジョイ「ヒューについて私が驚かされたのは、彼がどれだけリアルに役としていてくれるかということでした。彼は本当に役者として完璧で、すばらしかったです。また、彼は毎週、クルー全員にちょっとしたギフトとして、ロッタリーチケット(宝くじ)を買ってくれたりして、みんなを楽しませてくれました」
――本作は、リサ・ジョイ監督の劇場映画デビュー作となりましたが、ノーランさんから見た、リサ・ジョイ監督の強みはどんな点でしょうか?
ジョナサン「怖いもの知らずなところと、作品を作ることにおいて完全なビジョンを持っているところでしょうか。昔、彼女が『完全なるそのアート作品』という言葉を口にしたのですが、映画っていわばそういうものだと思っています。映像だけではなく音楽や光、エモーションなどいろいろな要素がありますが、リサはそれらの要素が重なって1つのアート作品になることを誰よりもわかっている監督だと思います」
――本作ではまさに、総合芸術である映画の醍醐味を感じさせられました。脚本も非常に深みがありましたが、特筆すべきは、子どもを守ろうとする女性たちの母性が1つのテーマになっている点ではないかと。
リサ・ジョイ「本作の脚本を書いている時、私は1人目の子を妊娠していたので、母性というものは間違いなく今回のテーマになっています。例えばお腹の中の子どもがお腹を蹴ったりすると『なんてこの瞬間が大事なのだろう』と改めて考えたり、この子は自分が生涯をかけて守らなければいけないと思ったりします。母性にはノスタルジーがつきもので、例えば自分の子どもが成長していくことにすごくワクワクする反面、いつまでも赤ちゃんのままではいてくれないこともわかっています」
――メイのキャラクターも非常に多角的に描かれていましたね。
リサ・ジョイ「メイについて言うと、人はすべての側面を見てもらい、愛されることが真の愛なんだというテーマをはらんだキャラクターになっています。例えば、女性って1つの名称で呼ばれることが非常に多いです。若い時は若い女性で、大学生の時は大学生と言われ、結婚したら妻となり、子どもを産んだら母親と言われるように、女性はどうしても一面的な見方しかされません。でも、私たちはもっと複雑ですよね。すべての側面で自分自身を愛さなければいけないし、すべてを見たうえで自分を愛してくれる相手がいたら最高です」