関係者が語る『仮面ライダー』の未来。「フォーマット化している“仮面ライダー”を考え直す時が来ている」と東映・白倉伸一郎
第34回東京国際映画祭のTIFFマスタークラス「『仮面ライダー』の未来へ」が、11月3日に開催され、ゲストとして、東映取締役の白倉伸一郎氏、ジャパンアクションエンタープライズ代表取締役社長の金田治氏、脚本家の三条陸氏、アニメ評論家の藤津亮太氏が登壇。昭和・平成の仮面ライダーシリーズに携わった関係者らが「仮面ライダー」のこれまでとこれからを語った。
今回のシンポジウムでは、「生誕50周年であることと、3つの新プログラムの予定がある」ということから、「仮面ライダー」がテーマに。同シリーズは、今後『シン・仮面ライダー』(2023年3月公開)、『仮面ライダーBLACK SUN』(2022年配信予定)、そして『仮面ライダーW』の続編漫画をアニメ化した「風都探偵」(2022年夏配信予定)の展開が発表されている。
そんななか、メンバーはまず「仮面ライダーの最初の思い出」からトークセッション。『仮面ライダー』でトランポリンアクションを担当していた金田は、「トランポリンで上手く跳べずに転げ落ちたときには『お面大丈夫か』という心配しかされなかったというのが最初の思い出(笑)」と苦笑い。
さらに、「『仮面ライダーBLACK』というのは黒尽くめで、黒が好きだから『良いですね~』と思っていた。あのときはクリント・イーストウッドの『ダーティハリー』とかやっていたので、変に構えたり、エンディングでも変にアクションしたりするのをやめて『遠くからひたすら歩いてくるだけなのはどうか』と監督に言ったら、望遠でそう撮ってくれた。立つときも仁王立ちというか。たたずまいで魅せられるよう、あまりチャカチャカせず、どっしりしたスタイルにして。それで、前の仮面ライダーとはちょっと変わって、大人のイメージになったのかなと思います」と、制作の裏側を明かした。
一方、三条は「僕は1話から楽しんで見ていて、友だちみんなでテレビの前に集まって見ていたのを思い出します。当時は『とんでもないヒーローものが始まるらしい』と噂になっていたんですよ。2話は本当に怖くて震え上がった思い出もあります」とコメント。『仮面ライダーW』でメインライターを務めた三条は、同作を制作したときに“押さえていたこと”についても語り、「悪いヤツのテクノロジーで仮面ライダーも戦うというところを押さえていました。基本、敵と同族。悪の力で戦う。そこが石ノ森章太郎先生のベーシックなところだと思います」と自身の見解を示した。
また、白倉は「仮面ライダーは、格好良いというか変だなと思っていました。カブトムシとかライオンとか、人気のある動物じゃなくてバッタがモチーフ。仮面ライダーが好きになったからといってバッタは好きにならない。そのうち慣れましたけど、変だなと」と、初回放送当時に抱いた率直な感想を語って、会場から笑いを誘った。
そして「石ノ森先生が不在になってしまっているので、『仮面ライダーアギト』以降、自分たちで『仮面ライダーとはなんぞや』と考えなければならなくなった。漫画を読みふけって、石ノ森ワールドとはなにかを掘っていく作業をしたのですが、かなりしんどい想いをしました」と振り返り、「これまでは仮面ライダーという軸に、探偵もの、刑事ものといった別のモチーフを持ってきて作品を保ってきていましたが、現在は、次のステップに進んでいく時が来ていると思います。平成ライダーの時は、昭和ライダーから変化していることがアピールポイントでしたが、いまは『仮面ライダーとはこういう作り』というのが決まってきて、フォーマット化してきている。そこから、もう一回考え直す時が来ているのではないか」と課題を提起。
続けて、「『なんぞや』の答えは出るわけじゃないし、作品の可能性は無限にあると思う。初代仮面ライダーも偶然の積み重ねで作り上げられ、今日がある。設定には隠しきれない矛盾もあるが、それが大きな魅力にもなっているので。仮面ライダーの戦いはこれからなんだと思う」と、仮面ライダーの未来について言及した。
最後に三条も「復古主義ではなく、マインドを踏襲して、時代の空気を取り入れる観点をやめないことで、仮面ライダーは次の可能性に続けていけると思う」と意見を述べ、金田は「(時代は違っても)生きているのはみんな同じ人間。キャラクターは変わらないと思うし、僕らが死んでいなくなっても、仮面ライダーを続けていってほしい。子どもには“夢と希望”を与えて。ヒーロー番組は教育番組。これから見る人々にもこういうメッセージを送っていってほしい」と熱く語り、イベントを締めくくっていた。
なお、第34回東京国際映画祭は11月8日(月)まで開催されている。
取材・文/平井あゆみ