第34回東京国際映画祭、東京グランプリはコソボの女性監督によるデビュー作!松居大悟監督は観客賞受賞に涙|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
第34回東京国際映画祭、東京グランプリはコソボの女性監督によるデビュー作!松居大悟監督は観客賞受賞に涙

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第34回東京国際映画祭、東京グランプリはコソボの女性監督によるデビュー作!松居大悟監督は観客賞受賞に涙

第34回東京国際映画祭のクロージングセレモニーが11月8日にTOHOシネマズ日比谷で開催され、各賞が発表された。コンペティション部門の最高賞にあたる東京グランプリ/東京都知事賞は、カルトリナ・クラスニチ監督の『ヴェラは海の夢を見る』。日本から選出された松居大悟監督の『ちょっと思い出しただけ』は観客賞を受賞した。

カルトリナ・クラスニチ監督の『ヴェラは海の夢を見る』が東京グランプリ/東京都知事賞を受賞した
カルトリナ・クラスニチ監督の『ヴェラは海の夢を見る』が東京グランプリ/東京都知事賞を受賞した

東京国際映画祭は世界中から優れた映画が集まる、アジア最大級の映画の祭典。今年は113の国と地域、1533本もの応募のなかから15作品がコンペティション部門に選出された。『ヴェラは海の夢を見る』は、男性優位の環境に抵抗する女性を力強く描いたコソボの女性監督によるデビュー作。クラスニチ監督の来日は叶わず、代わりに駐日コソボ共和国大使館の臨時代理大使、アルバー・メフメティが授賞式に参加した。


クラスニチ監督は大感激!
クラスニチ監督は大感激!

審査委員長を務めたイザベル・ユペールは「コソボの勇気ある新世代の女性監督によるすばらしい作品群に、また新たな1作が加わった」と祝福。会場にはクラスニチ監督が受賞の言葉を受け取った瞬間のメッセージビデオが届き、クラスニチ監督は「オーマイガー!」と大喜び。「9月に、私の初長編映画が東京国際映画祭のコンペティション部門に出品されると連絡をいただき、大変光栄だった。東京と日本は私にとって夢のような映画の国。またこの映画祭に初めて参加するコソボ映画だったということも大変光栄です」と感激を明かし、「グランプリを受賞を知り、喜びのあまり大声で叫び、泣いてしまいました」と語っていた。

【写真を見る】観客賞を受賞した松居大悟監督は涙!
【写真を見る】観客賞を受賞した松居大悟監督は涙!

観客賞を受賞したのは、松井監督の『ちょっと思い出しただけ』。トロフィーを握りしめた松井監督は「東京国際映画祭は4回目の参加。初めてこの重さを感じているのがすごくうれしい」と感涙。「この2年くらいの世界中の苦しい時間、悔しい時間というものが、ただ悲しいことや嫌なことではなく、人と会える瞬間のうれしさや鮮やかさを愛おしく思えるように、過去といまを等しく抱きしめられるように作りました。前に進んでいってほしいと思って作りました」と映画に込めた想いを語り、「尾崎(世界観)くんの主題歌によって生まれた物語。尾崎くんは明日が誕生日。誕生日プレゼントとして伝えられる」と笑顔を見せた。「これからも映画を作ります。頑張ります」と意気込み、大きな拍手を浴びていた。ユペールから「池松壮亮さんと伊藤沙莉さんという、すばらしい役者さんによるケミストリーを描いていた」と主演俳優たちを称えられるひと幕もあった。

またユペールは総評として、コンペティションに選出された15作品を振り返り「映画の多様性、豊かさを感じた」とコメント。「私たち審査委員は、世界のさまざまな国々の多様なコミュニティを扱っている作品に向かい合うことになりました。多様性と共に、社会の現状を見ることができました」と語る。また「女性を描いた作品がたくさんあった」とも。「(コンペティション作品)『ヴェラは海の夢を見る』『市民』『もうひとりのトム』などの主役たちは、3人とも苦境や腐敗、暴力に直面しています。それでありながら、3作品の主人公の誰もが被害者としては描かれてはいません。一人一人が敵を見極め、退治していくことができる。戦いの勝ち負けに関わらず、未来に目を向けています」と映画から女性の力強さを感じたといい、「15作品とともに世界を探求することはとても楽しいことでした」と審査が充実の時間となったことに感謝していた。

<第34回東京国際映画祭コンペティション部門受賞結果>

■東京グランプリ/東京都知事賞:カルトリナ・クラスニチ監督『ヴェラは海の夢を見る』

■審査委員特別賞:テオドラ・アナ・ミハイ監督『市民』

■最優秀監督賞:『ある詩人』ダルジャン・オミルバエフ監督

■最優秀女優賞:『もうひとりのトム』フリア・チャベス

■最優秀男優賞:『四つの壁』アミル・アガエイ、ファティヒ・アル、バルシュ・ユルドゥズ、オヌル・ブルドゥ

■最優秀芸術貢献賞:ヒラル・バイダロフ監督『クレーン・ランタン』

■観客賞:松居大悟監督『ちょっと思い出しただけ』

<アジアの未来部門>

■アジアの未来作品賞
ホセイン・テヘラニ監督『世界、北半球』

<Amazon Prime Video テイクワン賞>

◾︎テイクワン賞
キム・ユンス監督『日曜日、凪』

◾︎審査委員特別賞
瑚海みどり監督『橋の下で』

取材・文/成田おり枝


さらなる進化を目指す、「第34回東京国際映画祭」特集

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