感謝祭週末の北米ランキングは、『ミラベルと魔法だらけの家』が初登場V!『ドライブ・マイ・カー』も公開スタート
北米映画界の一年で一番の書き入れ時である感謝祭の連休。コロナ禍の真っ只なかだったことで有力作の公開が見送られた昨年は、興収ランキング上位10作品の5日間の合計興収は2000万ドルにも満たなかったが、今年はおよそ7倍の1億3700万ドルまで持ち直した。それでも2019年以前の10年間の平均が約2億5000万ドルであったことを考えるとまだ完全復活には遠く、このタイミングで新たな懸念材料が出てきたとあれば年末の興行への影響は避けられないだろう。
そんな感謝祭週末(11月26日から28日)の北米興収ランキングで初登場1位を獲得したのは、例年通りこの連休に狙いを定めて新作を公開するディズニーの『ミラベルと魔法だらけの家』(日本公開中)。公開初日の24日から5日間での興収は4056万ドルで、週末3日間では2720万ドルと現状を踏まえればまずまずのオープニング成績に。批評家や観客からも好評で、春に公開された『ラーヤと龍の王国』(21)同様、息の長い興行が見込めそうだ。
次週末の“ポスト・サンクスギビング”は例年、多くの作品が前週比半減以上の大きな興収下落に見舞われる。前週1位を飾った『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(2022年2月4日日本公開)が5日間で3500万ドル、3日間でも2420万ドルと、かなりの僅差で2位に食い下がっており、次週も両作品の熾烈な首位争いが繰り広げられる可能性は充分だ。
一方で3位に初登場したのは、今年2本目のリドリー・スコット監督作となる『ハウス・オブ・グッチ』(2022年1月14日日本公開)。初日からの5日間で2200万ドル、週末3日間で1442万ドルと、すでに『最後の決闘裁判』(21)の北米累計興収を上回ることに成功。同作と同じように、スコット監督作品の客層の年齢層の高さが懸念されていたが、主演を務めるレディー・ガガのスターパワーがそれを上回ったようだ。
ちなみに批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価は62%と少々低め。アカデミー賞レースへの参戦可能性は興行的に伸び悩んだ『最後の決闘裁判』よりも高いと思われていたが、批評家のリアクションのみを考えると少々微妙なようにも思える。とはいえ観客からの好意的評価の割合は83%と高く、ガガをはじめジャレッド・レトの怪演も話題を集めており、演技部門での善戦は大いに期待できよう。
そしてこの週末も限定公開で第94回アカデミー賞の有力作が封切られた。まずはポール・トーマス・アンダーソン監督が、亡き盟友フィリップ・シーモア・ホフマンの息子クーパー・ホフマンを迎えて手掛けた『Licorice Pizza』は、1館あたり8万6289ドルという高アベレージで4館限定公開ながら13位にランクイン。
また、日本から賞レース参戦が期待されている濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(日本公開中)も2館での限定公開で、1館あたりのアベレージは6887ドルを記録。3年前の同じ時期に5館で公開された是枝裕和監督の『万引き家族』(18)は1館あたり1万7852ドルで、上映時間の長さや映画興行を取り巻く現状を考えれば大健闘といえよう。先日発表されたゴッサム賞では、今年のパルムドール作品を抑えて国際映画賞を受賞。アカデミー賞では国際長編映画賞以外の部門にも期待が持てそうだ。
文/久保田 和馬