新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』は廃墟が舞台、少女が戦うアクションムービー!上白石萌音&森七菜はオーディションに意欲!
世界的に注目されるアニメーション監督である新海誠監督。『君の名は。』(16)、『天気の子』(19)に続く3年ぶりとなる最新作『すずめの戸締まり』(2022年秋公開予定)の製作発表記者会見が12月15日に東京・帝国ホテルで行われ、新海監督が出席。「アクションムービー」にチャレンジしていると明かした新海監督が、「扉を開いていく物語ではなく、閉じていく物語を作りたい」と最新作に込めた想いを告白。また『君の名は。』ヒロイン・宮水三葉役の上白石萌音、『天気の子』ヒロイン・天野陽菜役の森七菜も登場。最新作について語り合った。
『すずめの戸締まり』は、日本各地の廃墟を舞台に災いの元となる“扉”を閉めていく少女、すずめの解放と成長を描くロードムービー。新たに挑戦したことは「すごくたくさんある。一つにはアクションムービーであること」という新海監督。鋭意製作中で、すずめ役に関してもまだオーディションを行っておらず、現時点ではまったく未定だという。
新海監督は3つのキーワードをあげながら、本作を紹介。1つ目は「日本列島の各地をめぐるロードムービー」だということ。新海監督は「日本全国を広く舞台とした冒険映画です。各地に舞台挨拶に伺うと、次は僕の町、私の町を舞台にしてくださいと言われることも多い。うれしいんですが、全部は出せないしどうしようと思っている。ロードムービーにすることで欲張りをして、各地の様々な風景、魅力的な人々、特別な出会いを描くことができると考えた。欲張った映画になっています」とにっこり。
2つ目は「扉を開いていく物語ではなく、閉じていく物語を描きたい」ということだという。新海監督は「どんなことでもそうですが、始めることよりも終わらせることのほうが難しい。映画作りはまさにそう。多くの仕事、恋愛、家族関係もそうでしょうし、生活のなかでも終わらせることのほうが難しい。少子高齢化が進んでいくこの国にとって、いろいろな出来事を始めることより、閉じていくことのほうが難しいと感じることが多くなってきました」と心境を吐露。「いま作るべきもの、お客さんが観たいものは、いろいろな可能性を開いていく物語ではなく、一つ一つの散らかってしまった可能性をもう一度見つめて、きちんと閉じていく。そのことによって次に進み、本当の新しい場所を見つける。そういう物語を作るべきなんじゃないかと考えた。ロードムービーなので、各地の扉が開いていく。様々な扉が登場する」と明かす。
3つ目は「映画館に足を運びたくなる理由となる映画を作ること」という願い。新海監督自身も「配信でドラマなどを楽しんで観ている」そうだが、「映画館は人間の持っている能力を発揮させてくれる場所。それは感情移入すること、物語に没入する能力。映画館に足を運んで暗闇のなかに座って、集中して大きなスクリーンを観ることで、もっともそういう能力を発揮して物語に入り込めると思う。“すずめがいるから映画館に行きたい”と思っていただけるような映画を目指したい」と意気込んだ。
また新海ファミリーを代表して、上白石と森も出席。上白石は「私が登壇したことを知ったら、神木さんが歯を食いしばって悔しがると思います」と新海監督ファンの神木隆之介を気遣い、森は「監督とお会いするのも、たくさんのフラッシュをたいていただいてお話するのも久しぶり。緊張しています」とキュートな笑顔を見せ、会場を盛り上げた。2人とも本作の絵コンテを映像にしたビデオコンテを観たそうで、上白石は「めちゃくちゃおもしろかった。新海イズムを保ちつつ、また新たな扉を開けられた。ゾクゾクした」と大興奮。森は「監督の作品は、ヒロインに監督の夢や理想まで乗っている気がする。それがヒロインを輝かせている。今回は力強さも感じた。どういう女の子であってほしいと思いながら描いていったのか」が気になっているという。
新海監督は「すずめはアクションシーンも多い。戦う女の子。あまりそういうアニメーションを描いてこなかった。ガードレールを飛び越えたりもする」とコメント。すずめ役の声優がまだ決まっていないこともあり、上白石と森は「オーディションを受けない?」とステージ裏で話していたという。新海監督が「お2人が来たら、僕はパニックになってしまう。オーディションに強そう。勝ってしまいそう」と笑うと、上白石は「でもちょっと気になるよね。どちらを選ぶのか…。オーディションはフェアなものですから」、森も「決めるのは新海さんですから!どちらも選ばれないかもしれない」と楽しそうに話していた。
『すずめの戸締まり』のキャラクターデザインを務めるのは、『君の名は。』『天気の子』と新海監督作品のみならず、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)の作画監督を務めるなど、いまや日本を代表するアニメーターとなった田中将賀。作画監督は『星を追う子ども』(11)、『言の葉の庭』(13)、『君の名は。』と新海作品を多く手掛けてきた土屋堅一。美術監督には『君の名は。』『秒速5センチメートル』(07)などで繊細かつドラマチックな背景を生み出した丹治匠と、日本最高峰のスタッフが新海監督の元に集結した。企画開発は2020年1月〜3月。脚本開発は2020年4月〜8月、絵コンテ開発は2020年9月〜2021年12月、作画(アニメーション)は2021年4月より進行している。
取材・文/成田おり枝