北米で『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が異次元の大旋風!史上2位のオープニング成績で堂々1位発進
先週末(12月17日から19日)の北米興収ランキングの速報値が発表された瞬間、思わずその数字を何度も確認してしまった。2021年最後にして最大の話題作である『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2022年1月7日日本公開)が封切られ、初日から3日間の興行収入が2億5000万ドルになると報じられたのだ。そしてその後、より正確な数字へと修正された。初日から3日間の興行収入は「2億6013万8569ドル」であったと。
マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)版「スパイダーマン」シリーズの第3弾となる本作は、“マルチバース”の幕が上がることが公開前から大きな話題を集めており、2000年代に公開されたサム・ライミ版「スパイダーマン」3部作と2010年代前半の「アメイジング・スパイダーマン」シリーズの悪役が大集合を果たす。熱心なスパイダーマンファンやマーベルファンが“ネタバレ”を避けるために我先にと劇場に押し寄せることは想定の範疇であったわけだが、コロナ禍の現状を踏まえるまでもなく、この成績はまさに次元違いのものといえよう。
コロナ禍以降のこれまでのオープニング記録は『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(日本公開中)の9003万ドル。『スパイダーマン:NWH』はその3倍近くを一気に稼ぎだしただけでなく、12週目を迎えた『ヴェノム~』の累計興収2億1200万ドルをたった3日で突破。また、今年公開されたほかのMCU作品、『ブラック・ウィドウ』『シャン・チー/テン・リングスの伝説』『エターナルズ』のオープニング興収をすべて合計しても『スパイダーマン:NWH』の方が上回っているという驚異的な数字だ。
速報値の段階では『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)と『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)に次ぐ北米オープニング歴代3位の大記録だったが、上方修正されたことで『インフィニティ・ウォー』を超えて2位に上昇。21日の火曜日の段階で北米累計興収3億ドルを突破し、全世界興収はすでに7億5000万ドルも突破。コロナ禍の新たな懸念要素が出てきたなかで、どこまで興行成績を伸ばすことができるのか。そしてこの大成功がほかの作品にも良い影響をもたらすのか、大いに注目が集まるところだ。
一方で5位に初登場を果たしたのは、『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)でアカデミー賞を制したギレルモ・デル・トロ監督の4年ぶりの新作となる『ナイトメア・アリー』(2022年3月25日日本公開)。『悪魔の往く街』(47)として映画化されたウィリアム・リンゼイ・グレシャムの小説を、ブラッドリー・クーパー、ケイト・ブランシェット、ウィレム・デフォー、トニ・コレット、ルーニー・マーラというオールスターキャストで再映画化したサイコスリラーだ。
公開時期的にもアカデミー賞に向けて狙いを定めた作品であり、実際にアメリカ映画協会賞やナショナル・ボード・オブ・レビュー、ブロードキャスト映画批評家協会賞など重要な前哨戦で作品賞の10傑入りを果たすほか、撮影賞や美術部門を中心に各地の批評家協会賞でも善戦中。近年ではダニー・ボイルやキャスリン・ビグロー、トム・フーパー、アレハンドロ・G・イニャリトゥらがオスカー受賞作の次の作品でも作品賞候補にあがっており、デル・トロもそれに続くことができるのだろうか。
文/久保田 和馬