清水監督が「ゾッとさせられました」と感嘆!第1回日本ホラー映画大賞授賞式が開催
令和の新しいホラー映像作家の発掘・支援を目指すフィルムコンペティション「日本ホラー映画大賞」の第1回授賞式が12月26日にEJアニメシアター新宿で開催。名誉ある大賞の受賞作品は下津優太監督の『みなに幸あれ』で、清水監督は賞金20万円と、製作委員会製作による新作長編映画(応募作品のリメイク版または完全オリジナル作品)を手掛ける権利を得た。清水監督は「長編映画に挑戦させていただくとういうことで、これが次の新しいJホラーだ、下津監督が作った新しいホラーだと言ってもらえるように、自分の人生を懸けて取り組ませていただきたいと思います」と決意を語った。
ホラーというジャンルに絞った一般公募のフィルムコンペティションとしては、日本初の取り組みとなる日本ホラー映画大賞。選考委員長は清水崇監督で、選考委員を女優の堀未央奈、映像クリエイター、声優、監督のFROGMAN、ロックバンドBase Ball Bearの小出祐介、映画ジャーナリストの宇野維正が務めた。株式会社KADOKAWAアニメ事業局の工藤大丈局長によると「アニメと実写で、100本強(104本)の応募をいただき、時代のニーズや欲求が高いんだなと改めて思いました。新しい才能の船出を祝したいです」と挨拶。
清水監督は「僕はもともとホラーが苦手でしたが、中学生くらいでようやく観れるようになりました。子どものころは、ホラー映画なんて作るのは、おかしな大人だろうなと思っていましたが、自分もそんなおかしな大人になっていました。最初に観たのは『死霊のはらわた』でしたが、15年くらい後でそれを撮ったサム・ライミ監督に呼ばれ、一緒に映画を作る機会をいただき、気がつけば20年以上、ホラー映画ばかりを撮り続けています」とハリウッドリメイク映画『THE JUON/呪怨』(04)についてのエピソードをしみじみ語った。
清水監督は今回の選考にあたり「ぞっとするような作品がありました」と感心していたが、大賞受賞作『みなに幸あれ』について「下津監督の作品は、ぞっとするような怖さプラス社会的な通念、世界中に通ずるメッセージが下地に流れている感じがしましたし、全体的にバランスも取れている。大賞を獲った方は劇場公開する映画をサポートしてもらえるので、もしかしたら人生を変えてしまうかもしれない。選ぶ側もプレッシャーを感じていましたが、『みなに幸あれ』にはその価値があるし、センスも才能も感じて選ばせていただきました」と心から称えた。
下津監督はトロフィーを手にして笑顔を見せ「僕は普段、CMやミュージックビデオの監督を主にやっていますが、8月くらいに日本ホラー大賞のことを知りまして、是が非でも大賞を獲りたいと思いました。映画1本目を撮るのは狭き門で、ほぼ道がないと思っていましたが、そういうなか、こういう機会をいただけたことは光栄なことですし、どんどんこの賞が続いていけばいいなと思っています」と喜びを口にした。
審査員特別賞は平岡亜紀監督作の『父さん』で、清水監督は「僕は、自分でホラー映画を作っているし、撮影現場も作り方も心得ているので、職業病からゾッとしたり驚かされることはほぼなくなっているんですが、この作品にはゾッとさせられましたし、すばらしいと思いました」と評したあとで、平岡監督について「昔から知り合いでした。いまトロフィーを渡した瞬間に気づきましたが、なにも知らなくて。ゾッとしました」と言って会場の笑いをとった。
女優もやっているという平岡監督は「清水監督には、私が出演した舞台にゲストとして登壇していただいたり、打ち上げでもお話をさせていただいたことがあるので、私が一方的に知っていたんです」と笑顔を見せ「私はホラー映画が大好きで、ホラー映画を観るのは人生の楽しみの1つで、好きすぎて作っています。今回2本応募しましたが、その1本が賞を獲れて光栄です。これからも人々を縮みあがらせるような作品を作っていけたらと」と意欲を口にした。
また、『その音がきこえたら』でMOVIE WALKER PRESS賞を受賞した近藤亮太は「先程、清水監督が『死霊のはらわた』を観たことでホラー映画を撮られ、サム・ライミ監督の下でリメイク作品を監督されたと言われましたが、僕も劇場版の『呪怨』を観て、ホラー映画を作りたいと思いました。それで本当に怖いものを作りたいと考えて、今回の作品を作り、こういった形で賞をいただけたのでうれしく思っています」と喜びを語った。
最後に審査員たちがそれぞれに総評を語ったあとで、清水監督はこう締めくくった。「僕も実は、黒沢清監督に声をかけられたことが、監督デビューのきっかけとなりました」と黒沢監督に感謝し「そうやって見いだして紹介してくださる先輩陣がいたからこそ、ここまで来れたので、チャンスはどこにでも転がっています。第2回もあるので、今後、僕ら審査員を悔しがらせてほしいし、僕らを驚かせてくれる作品が出てくることを願っています」と未来の監督陣へ激励のメッセージを送った。