『ナイル殺人事件』が北米初登場1位!『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』は全米歴代3位に浮上
『ベルファスト』(3月25日日本公開)で第94回アカデミー賞監督賞にノミネートされたケネス・ブラナー監督が、『オリエント急行殺人事件』(17)に引き続き名探偵エルキュール・ポアロを演じた『ナイル殺人事件』(2月25日日本公開)がついに北米公開。先週末(2月11日から13日)の北米興収ランキングでは、大方の予想通り初登場ナンバーワンを飾った。
元々2020年10月に公開される予定だった『ナイル殺人事件』。そのため撮影が行われたのは『ベルファスト』より前の2019年の暮れだった。例によってパンデミックの影響で幾度となく公開が先延ばしになり、一時は20世紀スタジオの公開ラインナップから消えて待ち望んでいたファンをヒヤヒヤさせたことも。初日から3日間のオープニング興収は1289万ドル。前作が2868万ドルスタートで最終的には1億ドルを突破していることを考えると、約9000万ドルの製作費の回収はなかなか厳しそうだ。
参考までに現在と貨幣価値が異なるが、1970年代のポアロ映画2作を比較してみたい。シドニー・ルメット監督の『オリエント急行殺人事件』(74)は興収2763万ドル。その4年後に製作されたジョン・ギラーミン監督の『ナイル殺人事件』(78)は1456万ドルと、こちらも半減していることがわかる。やはりオールスターキャストが売りの前者の方が興行的に成功は収めやすいタイプの作品だということだ。
改めてブラナー版に戻り批評集積サイト「ロッテン・トマト」のスコアを確認してみると、『オリエント急行殺人事件』は批評家60%、観客53%と伸び悩み気味。対して今回の『ナイル殺人事件』は批評家64%で観客83%と、想像以上に観客からの評価が高い。海外旅行が難しいいまの時代に、旅情ミステリーがハマったということだろうか。そうした評判の良さが興収に結び付いてないのは気掛かりだが、「スーパーボウル」と重なった日曜日の興収の低さを考慮すれば仕方あるまい。息の長い興行ができればシリーズ3作目の可能性も見えてくるだろう。
また、ジェニファー・ロペス主演のロマコメ映画『マリー・ミー』(4月22日日本公開)が3位に、リーアム・ニーソンが『ファイナル・プラン』(20)に続いてマーク・ウィリアムズ監督とタッグを組んだ『Blacklight』が5位に初登場。前週1位を飾った『Jackass Forever』は前週比65%ダウンに見舞われるも2位を死守し、公開9週目の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(日本公開中)は4位。月曜日の段階で北米累計興収7億6098万ドルに達し、『アバター』(09)を抜いて歴代3位に浮上した。
そして例年通りアカデミー賞のノミネート発表直後の週末とあって、候補入りを果たした作品の伸びが目立つ。作品賞や監督賞などで候補入りしたポール・トーマス・アンダーソン監督の『リコリス・ピザ』(初夏日本公開)は劇場数を大きく増やし9位にランクアップ。『ベルファスト』や『ドライブ・マイ・カー』(日本公開中)、『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)なども前週より大幅に興収を伸ばしている。
文/久保田 和馬