小松菜奈、“手紙”のサプライズに「家宝にします」と涙…『余命10年』舞台挨拶が開催
『余命10年』(公開中)の公開記念舞台挨拶が5日、丸の内ピカデリーにて開催され、小松菜奈、坂口健太郎、山田裕貴、奈緒、藤井道人監督が登壇。全身全霊で小説「余命10年」を生みだした原作者、小坂流加の想いを受け継ぎ、撮影に約1年かけ紡いだ映画ができあがった喜びや、公開後の反響について語った。
自らの運命を悟り恋はしないと心に決めた茉莉(小松)と、生きることに迷い、自分の居場所を失った和人(坂口)。同窓会での再会をきっかけに2人は惹かれあい、ありふれた毎日が輝きだす。坂口の演技について小松は「坂口くんは和人で和人は坂口くん。絶対的な存在です」と説明。「投げかけてくれる笑顔が(撮影中)本当に救いだったことは間違いないです。スクリーンに生きている和人は本当にすばらしくて、なんかすごいなぁって」としみじみ。「桜の下、和人が振り返るシーンには、ちゃんとその先に茉莉が見えていました。撮影を現場で見た瞬間に「この映画は大丈夫だ」と確信したという小松は、坂口の表情を見て「本当に、いい顔するなあ」と感じ、試写後にすぐに坂口に電話し、感想を伝えたという。
小松よりも数日早く試写を観たという坂口は、すぐに感想を伝えたかったものの、小松が観終わるまで「いまかいまかと待っていました」とニッコリ。「観たよ、という連絡をもらって、和人のセリフのように『よく、生き切ったね』という感情になったことを伝えました」と感想を語り合った様子を振り返った。
茉莉は、愛しい人の前でも一番言いたいことが言えないキャラクターだ。「愛しい和人にも心の奥底を見せることができない。打ち明けられないまま物語が進んでいきます。向けられた笑顔は(本当の)笑顔ではなく、発した言葉の先の感情を心のなかで作り上げながら和人と一緒にいなきゃいけない茉莉には、計り知れない辛さがあったと思います」と茉莉を演じる難しさを解説した坂口。撮影中の小松の様子については、「カメラが回っていない時はいろいろな話をしましたが、“用意”がかかった時には、感情むきだしで生きる茉莉になっていました。隣で一緒に撮影していて、なんか言葉にできない美しいものがあったと感じています」と絶賛していた。
映画にはたくさんの反響が届いているようで、「茉莉として報われたという想いです」と微笑む小松。「映画が出来上がり、全国にしみわたっているんだと感じてとても幸せです」と喜びを明かした。茉莉と和人の中学の同級生、タケルを演じた山田は「友達として支える役。(小松と坂口)二人が背負ったものは計り知れないもので、すごいプレッシャーだったと思います。作品を観た方たちから、茉莉と和人そして、菜奈ちゃんと坂口くんがよかったという声が届いているのを間近で見て、この映画に携われて良かったと思っています」と劇中同様、友人として二人を優しく見守るようなコメントを伝えた。
茉莉の親友、沙苗役の奈緒は「笑うこと、涙が出ること。みなさんの心が動く瞬間にこの作品が立ち合えていることがとてもうれしいです。茉莉が生きた証を伝えていく沙苗の使命、生きる意味などを感じながら演じました」と作品、演じたキャラクターへの想いを語った。
公開後の反響によろこびを感じているという藤井監督は「小坂さんの原作を預けてくれたご家族が、この映画を家宝にしますと言ってくださったこと。そして、試写後に興奮して話す俳優部の様子を見ていたので、いまみなさんに届いたことを実感し、やった甲斐があったと思っています。とてもうれしいです」とよろこびをかみしめた。また、「俳優部、制作部。それぞれが自分たちのすべてをかけて挑んできたつもりです。皆さんの生きる糧になればという願いを込めてつくりました。これから皆さんの手で大きな作品にしていただけることを願っています」と感謝と期待を込めて呼びかけた。
イベント最後には、原作者のご家族から手紙が届くサプライズも。あふれだす涙をぬぐいながら「手紙はやばいです。その手紙のコピーをください。家宝にします」と言葉を絞りだした小松は、改めて作品に関われたことに感謝。坂口も「改めて、感情むきだしの茉莉と一緒に生きられてよかったです」と小松を見つめながら、涙ながらに深々とお辞儀し、涙と笑顔のあふれるイベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ