木村拓哉、不死身の男・万次との出会いに感慨。とことん“本気”のワケを三池監督と語り合う!

インタビュー

木村拓哉、不死身の男・万次との出会いに感慨。とことん“本気”のワケを三池監督と語り合う!

木村拓哉が映画『無限の住人』(4月29日公開)で不死身の男・万次を演じた。大切な者を守るために、斬られても斬られても立ち上がる壮絶な生き様に圧倒されるが、それを体現した木村も満身創痍で万次役に向き合った。彼にとってソロとなって初めて公開される主演映画。このタイミングで万次と出会えたことに、木村は「ものすごくラッキーです」としみじみ。三池崇史監督と木村を直撃し、木村拓哉と万次との“運命的な出会い”について語り合ってもらった。

沙村広明の同名漫画を映画化した本作。望んでもいないのに不死身の身体にさせられた男・万次が、亡くなった妹の面影を持った少女・凜の用心棒となり、彼女の敵討ちに身を投じていく姿を描く。

万次を演じるためには、アクション能力や不老不死の存在感など、あらゆる面で特別な力が必要となるが、その万次役に「木村拓哉を」と強く求めたのは三池監督自身だ。「木村さんと万次という役の奇跡のジョイント。死なない男・万次が、誰かを守って今の時代にまだ生きていると考えたら、それは木村拓哉じゃないかと思った。キャスティングに迷いはありませんでした。この役はテクニックだけでできるものではないし、木村拓哉じゃないと無理だと思った」。

木村は「三池監督はピカソやゴッホのように、その絵を描き切るまで身を削るような人。画家のような映画監督です。画材として自分を選んでいただけて、とてもうれしかった」と三池組への参加を喜ぶ。映画冒頭の100人斬りシーンでは、三池監督のやり方をたっぷりと感じられたそうで、「監督が助監督さんに『今、何人斬った?』と聞いていて。助監督さんが『今、23人です』と言ったら、監督は『じゃあ、あと77人だね』と(笑)。映画の編集や盛り付けというよりかは、“収穫する”監督だと感じました。そのやり取りを見ていて、やる側としても腹をくくることができました」と全身全霊で万次に身を投じた。

この100人斬りシーンの前に、撮影中に怪我をしてしまったという木村。三池監督は「普通に歩くことも困難な状態だったんです。お医者さんも『無理じゃないか』と。でも木村さんの体は、なぜか本番になると動く。カットがかかると倒れ込むような感じでした」と木村のプロ魂に驚く。「万次は傷だらけになっていくんですが、木村さんも、本当に痛いわけで。万次は手首を落とされて、『いてぇ!』と相手に斬りかかっていく。もちろんそれはお芝居なんですが、木村さんはある種、自分の痛みやコンディションを役として活かしていたんです。木村さんには、それができる強さがある」。

三池監督が運命を感じたキャスティングは、「間違いなかった」と確信となった。三池監督は「木村拓哉=万次というキャラクターが、スタッフ・共演者をとんでもない渦に巻き込んでいった。映画に対する熱や、いい刺激をもらって、エキストラを含めみんなが『やっぱり映画って面白いじゃん』と思えるような現場だった」と自分自身、大きな刺激をもらったと話す。

三池監督も惚れ込んだ、木村の万次役へのハマり具合。真冬の京都の撮影において、木村は常に着流し一枚、素足に草履。隻眼という設定のため、片目をつぶした姿で現場に臨んでいた。さらに万次が直面するのは、激しい戦いの連続。これだけハードな役柄を演じ切る“原動力”となったのは一体なんだろうか?

木村は「それは、すべて現場です」と即答する。「現場には、本気じゃない人、全力じゃない人がいなんです。もし適当にやっている人がいたら、それが浮き彫りになるくらい。三池組はその最たる集団だと思います。だから『こうしなければいけない』と現場に行くのではなく、『おはようございます』と入った瞬間から、もうやるべきことがわかるような現場でした」。

「すごいですよ!」と興奮気味に振り返る木村。「夜中の3時に、山の中で雨が止むのを待っていた日があって。『雨は上がらないらしい』との情報が入るや、『じゃあ、雨を止めよう』というジャッジが下されたんです。『山の中に、雨が落ちてこない状況を作ろう』ということです。それも監督がそういう指示を出したわけではなく、部隊がそれぞれの役割として動く。木にロープを張って、白い幕をつって、見事に雨の降らない空間が出来上がった。そうやって三池組のモチベーションや熱、プライドが日々、感じられたんです。もうそのなかに身を投じていれば、本気になりますよね」。

撮影が行われていたのは、SMAPの解散報道が出た時期と重なる。木村は「私ごとなんですが、ちょうどバランスを取りづらい時期だった。でもクタクタになれる役だったので、万次として生きている時は眠ることもできました。エネルギーを出し切らせてくれた。この役、作品をやっていなかったら、厳しかったなと思っています」と胸の内を明かした。【取材・文/成田おり枝】

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