明石家さんま、『漁港の肉子ちゃん』“誕生の地”に念願の凱旋!満員の会場に「感謝しています」
明石家さんまが西加奈子の小説に惚れ込み、企画、プロデュースした劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』のトークイベント付き上映会が、4月16日に宮城県石巻市のマルホンまきあーとテラスで開催され、明石家さんま、渡辺歩監督が登壇。原作誕生のきっかけとなった石巻市で、さんまが「石巻に来られたこと、感謝しています」と満席の会場を見渡して、感無量の面持ちを見せた。
漁港の船に住むワケあり母娘の肉子ちゃんとキクコの秘密を描く本作。底抜けの明るさでパワフルに生きる肉子ちゃんと、多感なお年頃のキクコが精一杯生きる姿に、勇気と笑顔をもらえるハートフルな物語だ。アニメーション制作をSTUDIO4℃が手掛け、肉子ちゃん役を大竹しのぶ、キクコ役をCocomiが務めた。マルホンまきあーとテラス開館記念事業の一環として行われたこの日のイベント。会場には老若男女が続々と駆けつけ、2回上映すべてのチケットが完売する大盛況となった。
イベント冒頭では、原作者の西の元担当編集で、いまは石巻を拠点にしている株式会社口笛書店代表の日野淳が登壇し、「『漁港の肉子ちゃん』は、西さんと石巻と女川を旅行したことをきっかけに生まれた小説です。西さんが女川で一軒の焼肉屋さんを見つけました。それが映画の焼肉屋『うおがし』のモデルになっています」と石巻と本作の関わりを説明。「(震災前に書かれた原作をベースにしているため、)いまはなくなってしまった、石巻の風景が残っている貴重な映画。人を温かい気持ちにさせる映画になっています。それは、お2人のこの場所への優しいお気持ちがあってこそのもの」と、さんまと渡辺監督に敬意を表していた。
観客からのどよめきと大きな拍手と共に、ステージに姿を現したさんま。会場を見渡しながら、「本当は、上映をしてすぐにこのイベントをやりたかった。モデルになった土地ですから。1年かけてチャンスをいただいた。どうもありがとうございます」と、昨年夏の公開からやっと、石巻での上映がかなったことに感謝しきり。渡辺監督も「僕はずっと、この地で上映することを目標にしておりました。原作を読んだその時から、この地で『肉子ちゃん』ができたらいなと思っていた」と感慨を語っていた。
さんまが石巻を訪れるのは、震災直後の2011年の7月にテレビ番組の収録で訪れて以来、約11年ぶりのことだという。「11年前に来た時には、なにもなかったところに家やビルが建っている。人の力ってすごいなと感動しながら、ここまで来させていただきました」としみじみ。
司会を務めた、石巻市出身でホヤのおいしさを発信する“ホヤドル”として活動する萌江(もえ)が「石巻と言えば、ホヤは好きですか?」と唐突に質問すると、さんまは「見た目は好き。僕はハマチ派です」と正直に答えながら、「一つ目の質問がそれなの!?」とツッコんで会場を笑わせていた。
キクコ役で初めての声優にチャレンジしたCocomiについて話が及ぶと、さんまは「ココちゃん(Cocomi)には本当に驚きましたね。キムタク(木村拓哉)と工藤静香ちゃんの娘のココちゃん。10歳くらいのころに『いま声優の勉強をしている』というので、『いつかはアニメを作ろうと思っているから、主役はお前な』と冗談で言っていた」と家族ぐるみの交流について述懐。「その約束を守らなあかんということで、オーディションに来ていただいた。そこで(渡辺)監督にも聞いていただいた」のだという。
イベント後にマスコミ向けに行われた囲み取材では、さらにCocomiの才能について語るひと幕もあり、さんまは「オーディションでは、監督が大オッケーをくれた。声が美しいと。初めての芝居で、初めての声優で、初めての大阪弁。それでこの出来栄えに持っていったという、ココちゃんのすごさを感じました」と大絶賛。「木村に言いましたよ。『お前、仕事せんでも大丈夫やでって。ココちゃんに稼いでもらえる』って」と笑いながら、「それくらい器用で、勉強をかなりしてきてくれました。ワンシーン、ワンシーン、すごく家で練習したんだろうなというのは、見ていてわかりました」と努力家な一面にも惚れ惚れとしていた。
イベントのステージでは、司会の萌江が「時間が押してしまうと大変」と時間を気にすると、さんまは「押したら、後ろ(の予定)を押したらええやん」とトーク続行のやる気も十分。そのサービス精神旺盛な姿に観客も大きな拍手で喜びを表現し、さんまは盛り上がる拍手から“チャッ、チャッチャッチャ! ”と会場とコールアンドレスポンスするようにポーズを決めて「石巻もやるねえ」とうれしそうな笑顔。「こういった機会をいただいて、ありがとうございます。石巻に来られたこと、感謝しています」と喜びをかみ締めていた。
本作待望のBlu-ray&DVDは、4月27日(水)に発売される。初回限定生産となるBlu-ray豪華版には、制作の舞台裏を収めたメイキング映像や舞台挨拶の模様など、貴重な特典映像の数々がふんだんに収録。また、泣く泣くカットされた映画未映像化シーンの絵コンテ入り特製ブックレット(32P)も封入されている。
取材・文/成田おり枝