役所広司、『峠 最後のサムライ』で妻役の松たか子は「上品で華のある女優さん」

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役所広司、『峠 最後のサムライ』で妻役の松たか子は「上品で華のある女優さん」

司馬遼太郎のベストセラー小説「峠」を、黒澤明監督作品で助監督を務めたことでも知られる小泉堯史監督が映画化した『峠 最後のサムライ』。本作の完成披露試写会が5月2日に丸の内ピカデリーで開催され、役所広司、松たか子、小泉監督が登壇。夫婦役として共演した役所と松が、お互いの印象を明かした。

幕末の風雲児と呼ばれた、越後長岡藩家老の河井継之助(かわいついぎのすけ)を描く本作。倒幕の時代に、サムライとしての使命と庶民を先導するリーダーとしての狭間で葛藤しながらも、継之助が強大な武力を誇る明治新政府軍に立ち向かっていく。

『峠 最後のサムライ』の完成披露試写会が開催された
『峠 最後のサムライ』の完成披露試写会が開催された

3度の公開延期を経て、いよいよお披露目となる。継之助を演じた役所は「この映画の持つメッセージにおいては、考えさせられるような時期の公開になったようになったと思う」としみじみ。小泉監督は、継之助という人物に「非常に惹かれた。なんとか(映画を)やりたいと思った」と告白。企画が進むまでには困難もあったそうだが、「シナリオを役所さんに送ったら、『ぜひこの役に挑戦したい』と返事をいただいた。それに励まされて、もう一回頑張ってみようと準備を始めた。役所さんに大きな力になっていただいて、作品ができた」と役所に感謝していた。


『峠 最後のサムライ』のお披露目に笑顔を見せた役所広司
『峠 最後のサムライ』のお披露目に笑顔を見せた役所広司

継之助の魅力について、役所は「継之助さんの思い描いた国作りは、すばらしいものだったと思います。未来を見据えた、毅然とした態度から出てくる決断力は、リーダーとして理想の人物だと思います」と惚れ惚れとし、「こういったリーダーはいつの世にも必要なんじゃないか」と思いを巡らせる。またセリフが膨大だったこともあり、「セリフに立ち向かっていくことが、僕の今回の役割だなと思いました」と苦笑いを見せていた。

継之助を支えた妻、おすがを演じた松は「役所さんにお会いしたら、軽快な継之助さんだった。この人と一緒に生きている女性なんだなと、そこでイメージが広がった」と役作りについて説明。夫婦の魅力を聞かれると、「自分の夫を疑わないといいますか。ついつい勘ぐったり、試したり、いろいろな駆け引きなど、余計な力を使ってしまいそうなところを、すがという人は継之助さんを疑うことなく見つめている。かわいらしい2人で、すごく幸せな妻でした」と役所とすばらしい夫婦像を表現できたことに喜びをにじませる。

【写真を見る】松たか子、役所広司からの賛辞に大照れ!「見られない」
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お互いの印象について話が及ぶと、役所は「僕は松さんが20歳くらいの時に、絡みはなかったんですが、同じドラマに出ていたんです。スタジオの外のモニターで見ていたんですが、松さんがお姫様役だったんです。かごの中から出てくるシーンがあって、なんて華のある女優さんだろうと思って。すごく上品で」とにっこり。「そのころからずっと松さんを見続けてきて、久しぶりにお会いした。女性としても、妻としても、どんどん豊かになっていく感じがして。撮影の時は、松さんの包容力で2人のシーンが出来上がりました」と大いに支えられたという。

松は「本当にもったいない言葉。見られません(笑)」と役所の顔を見られないほど、大照れ。「妻をやらせていただけるということは、すごく勉強になると思って『ぜひ』と言ったものの、『私でいいんだろういか』と思っていた自分を包んでいただいた」とこちらも相思相愛の想いを吐露。「本当に幸せな現場でした」と目を細めていた。

小泉組に参加し、「現場は黒澤明監督時代の超ベテランのスタッフと、それに憧れてくる若いスタッフの混合チーム。現場を見ていると、こうやって映画作りというのは継承されていくんだなと目の当たりにした」という役所。「この映画には、21世紀を生きる我々の心に響く言葉がたくさん詰まっています」と語り、大きな拍手を浴びていた。

取材・文/成田おり枝

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