次世代“トップガン”たちが明かす、5か月にわたるトム・クルーズ教官との訓練生活「すべてを彼から学んだ」
『トップガン マーヴェリック』(公開中)を引っ提げ、先日およそ4年ぶりに来日を果たしたトム・クルーズは、来日記者会見で「映画はファンの皆さんのために作っています」と語った。「すばらしい物語を作り、世界を楽しませたい」という目的のもと、観客に“本物”を体験してもらいたいと願うクルーズの飽くなきプロ意識と映画愛が、自ずと共演者にも波及していくのだろう。本稿では象徴的なエピソードを、本作で共演した次世代の“トップガン”たちの証言と共にお送りしよう。
アメリカ海軍のエリート・パイロットチーム“トップガン”を舞台にした本作。若きエースパイロットたちをもってしても不可能なミッションを成功させるため、最後の切り札として白羽の矢が立てられたのは、伝説のパイロット“マーヴェリック”。トップガン史上最高のパイロットでありながら常識破りな性格と組織に縛られない振る舞いから、昇進せず現役であり続けるマーヴェリックは、新世代のトップガンと共に不可能なミッションに挑んでいく。
トム・クルーズが追求しつづける“本物”の体験
自身の出世作となった『トップガン』(86)から実に36年。長年あたためてきたその続編企画を実現するにあたってクルーズがもっともこだわったのは、CGを使わずに「すべてを実際に撮影する」ことだった。それこそが観客に“本物”を味わってもらえる最良の方法であり、その重要な役割を果たすのが本作の見せ場となる戦闘機での飛行シーンの数々だ。
前作『トップガン』でも実際にF-14のコックピットに乗り込んで撮影が行われたが、クルーズをはじめとした出演者のほとんどが訓練経験がなく、空中で耐えることができなかったという。その結果、クルーズの飛行するシーンだけがかろうじて本編で使えるものになった。それから長い時間のなかで、クルーズは数々の映画で生身のアクションを極め、同時にジョセフ・コシンスキー監督やクリストファー・マッカリーら理想実現に努めてくれる一流のスタッフ陣と出会う。
そして動きだした『トップガン マーヴェリック』では、クルーズ自身が自ら戦闘機に乗り込み強力な重力加速度にさらされるだけでなく、若きパイロットたちを演じる共演の若手俳優たちにも“本物”の演技が求められることになった。そこでクルーズは、彼らのために特別に設計された戦闘プログラムを用意する。それは、彼自身が10代の頃に出演した『タップス』(81)の際、製作陣がクルーズやショーン・ペンら若手俳優たちを本物のブートキャンプに送り込み、軍隊の世界を実際に体験させてくれたことがヒントになったようだ。
「『タップス』では若い俳優である僕たちが成長し、この映画がなんであるかを理解できる環境を作ってもらうことができました。同じように本作でもそれが重要だったのです。そしてチームの皆が実際のF/A-18に乗り込んでも気絶しないようにすることも必要でした」と振り返るクルーズ。アメリカ太平洋艦隊海軍航空部隊司令官を直接訪ね、彼らの信頼と協力を得たうえでトレーニングプログラムを編みだす。5か月にわたる厳しい訓練のなか、劇中のマーヴェリック同様“教官”として、若きパイロットの育成に全力を注ぎ込んでいったのだ。