次世代“トップガン”たちが明かす、5か月にわたるトム・クルーズ教官との訓練生活「すべてを彼から学んだ」

インタビュー

次世代“トップガン”たちが明かす、5か月にわたるトム・クルーズ教官との訓練生活「すべてを彼から学んだ」

「トレーニングがなければ成し遂げることはできなかった」

「僕にとって、いままででもっともダイナミックで多面的な撮影準備でした」。そう振り返るのは、劇中でマーヴェリックの亡き親友グースの息子、ルースター役を演じたマイルズ・テラーだ。その撮影までのトレーニングをテラーは、“ミニ・トム・ブートキャンプ”と形容する。

『セッション』のマイルズ・テラーが演じるのは、グースの息子ルースター役
『セッション』のマイルズ・テラーが演じるのは、グースの息子ルースター役[c]2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

「ジェット機に乗るためにはパスしなければならない多くの規制やテストが、海軍によって設けられていました。とにかく飛行時間を増やし、曲芸飛行の訓練をするしかない。とてもきつかったけれど、みんなと一緒になって取り組みました。個人的にはトムがこのような映画のためにどれだけの訓練をしているのかを直接見ることができて、とても興奮しました」。

一方、ハングマン役を演じたグレン・パウエルも、クルーズの“教官”としての本気度に驚嘆したことを明かす。「若い俳優たちを集め、彼らを精神的、肉体的ストレスに耐えられるだけでなく、ほぼ1年近く毎日それをこなすパイロットに実際に仕立て上げていく。戦闘機に乗ることはとてもハードで、このトレーニング・プログラムがなければ僕らは決して成し遂げることはできなかったでしょう」。

ハングマン役を演じたグレン・パウエル
ハングマン役を演じたグレン・パウエル[c]2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

パウエルのその言葉に、ボブ役のルイス・ブルマンも同調する。「どの飛行機から始め、どの飛行機へとレベルを上げていくのか。すべてトムが計画してくれました。『トップガン』の時にトムが望んでいた飛行入門を僕らに与えてくれたのです」。毎日トレーニングを終えると若手俳優たちは自己評価を行ない、感じたことや経験したこと、その日の挑戦や失敗などを書いてクルーズに提出。それをくまなく読んだクルーズは、時に彼らと議論を重ね、時に相談に乗りアドバイスを送ったという。ブルマンは「はじめは『トム・クルーズがそんなものを読むわけないだろう!彼は世界一忙しい人なんだから』と思いました。ですが彼は一つ一つを読んで、僕らと議論をしてくれました。それがトムという人です」と、敬意を込めて語った。

“本物”への姿勢から、若手俳優たちが得た学び

「トムは業界に入ったばかりの頃、ポール・ニューマンやジャック・ニコルソンといった大物から仕事を学ぶ機会を得た。それと同じチャンスを、今度は私たちに与えることを強く望んでいたのだと思います」と推察したのはフェニックス役のモニカ・バルバロだ。若手俳優への献身的な姿勢は、前述の『タップス』の時の経験をはじめ、クルーズ自身が若手だった時代に先輩たちから受けた恩を、次の世代の俳優へと継承していこうとする姿勢のあらわれといえよう。

フェニックス役のモニカ・バルバロ
フェニックス役のモニカ・バルバロ[c]2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

バルバロはさらに「彼は私たちを自分のプロセスに引き入れようとしてくれました。それは映画にとっても私たちにとっても良いことでした」と振り返る。14時間もの過酷な撮影を遂げた日であっても、クルーズは若手俳優と向き合う時間を作り、どんな些細な質問にも答えてくれたというのだ。それについてはペイバック役のジェイ・エリスも、次のように補足する。

「『ア・フュー・グッドメン』の時に初めてジャック・ニコルソンに会った時のことや、トムが『トップガン』で初めて空を飛んだ時のこと。質問をすれば彼は、40年以上にわたる自身の映画経験を包み隠さずに話してくれました。礼儀正しさと、一緒にシーンを演じる相手のために常に気持ちを向けるということ、相手が必要とするものを与えること、俳優としてのすべてを彼から学びました。それはつまり、“職人になること”であると思います」。


ペイバック役のジェイ・エリス
ペイバック役のジェイ・エリス[c]2022 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.

若きトップガンたちは口々にクルーズの凄さを讃え、この長期間にわたる経験を今後の俳優キャリアの大きな糧にしていくことを誓い合う。そしてパウエルは「僕らがF-18に乗り込む頃には、“本物”であるかのように振る舞いながら飛ぶことができました。本物のように話し、本物のように歩く。もはや演技していると感じることはなく、俳優ではなく“本物”のトップガン・パイロットになることができたのです」と強い自信をあらわにした。

カメラの回っていないところでも自身の経験を教え伝え“教官”でありつづけたクルーズと、それに食らいついた勇敢な“教え子”たち。作品と全身全霊で向き合った彼らが生みだした“本物”の映画体験。そのスリルと高揚感に満ちあふれた瞬間の数々を、是非とも劇場の大スクリーンで味わってほしい。

構成・文/久保田 和馬

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