伊藤健太郎、「第二章の始まり」と決意表明!「この先もずっと役者として生きていく」
俳優の伊藤健太郎が、6月3日に新宿ピカデリーで行われた、2年ぶりの映画出演にして主演を務めた『冬薔薇(ふゆそうび)』の初日舞台挨拶に阪本順治監督と登壇。映画公開の感慨を語り、「自分の第二章の始まり」と新たなスタートを切った。
本作は、阪本順治監督が伊藤をイメージして当て書きしたという意欲作。ある港町を舞台に、半端な不良仲間と連み、友人や女から金をせびってはダラダラと生きるなど“ロクデナシ”という言葉がよく似合う青年、渡口淳(伊藤)を中心にした人間ドラマだ。ある日、淳の仲間が何者かに襲われる事件が発生。思いもよらぬ犯人像が浮かび上がっていくさまを描く。
大きな拍手に迎えられて登場した伊藤は、会場を見渡しながら「今日という日を迎えられたこと、非常にうれしく思っています」としみじみ。「昨日の夜は、すごくドキドキしていました。初日ってこんなにも愛おしいものなんだなと感じました」と感無量の面持ちを見せた。両親も映画を観てくれたそうで、伊藤は「大感動してくれた。恩返しできたかなと思っています」と喜びをかみ締めていた。
初対面の思い出を振り返った阪本監督は、「私はこんな顔をしていますから。相当おびえていた」とにっこり。「かなり深掘りした話をして、濃厚な時間を過ごした」という。「最初は怖かった」と笑顔で正直に明かした伊藤は、「お話をさせていただくうちに、安心して、自分のすべてをさらけ出しても大丈夫な方だと感じた。すべてお話させていただいた。とにかくおもしろいことが大好きな方で。なによりも作品、役者、自分に対して愛を持って接してくださる方だなと感じました」と感謝しきり。
「自分のことを見てくれている。監督には見透かされているよう」とも話したが、阪本監督は「言葉遊びのようだけれど、気持ちは強いけれど、心はガラス板みたいなところがある。なにかの瞬間にバキッと割れるような部分を持っているなと。大きな声で笑う時があって、にぎやかな子だなと思ったけれど、たまにその大きな声で笑うのが寂しく感じる時もある」と撮影やプロモーションなど一緒に長い時間を過ごしてきた伊藤の印象を吐露した。続けて「気持ちは強いけれど、胃腸は弱い。この間の完成披露の後も謎の腹痛がね」とも。大笑いした伊藤は「お腹弱めです」と認めながら「そういう細かいところまで見てくださっていて、うれしい」と話していた。
2年ぶりの映画出演となった本作は、「これから先、役者として生きていくうえではなくてはならない、大事に大事に心の奥底にしまっておきたい作品」と打ち明けた伊藤。ステージではバラの花束を阪本監督にプレゼントし、サプライズで監督に宛てた手紙を読み上げるひと幕も。阪本監督には覚悟と恐怖心を持って会いに行ったことにはじまり、「あの日から、公開を迎えるまでの数か月はあっという間だった気がします。監督と出会えたこと、すばらしい先輩方とご一緒できたこと、本当に感謝しかありません。『冬薔薇』は僕にとって宝物です」と特別な経験になったといい、「『冬薔薇』は僕にとって、自分の第二章の始まりだと思っています」とキッパリ。「阪本監督と出会い、この先もずっと役者として生きていくと改めて強く思いました。そして芝居が大好きだと改めて強く思いました。阪本組に招き入れてくださり、本当にありがとうございました。次はボクシング映画でご一緒したいです」と緊張しつつも、ラブコールと共に強い決意を表明した。
会場から大きな拍手が上がるなか、阪本監督は「ヤバいですね。手紙は聞いていなかった。まいったなあ」と感激しきり。「一方的に感謝された感じですが、伊藤健太郎という人と仕事をすることがなければ、このような脚本、物語は一生書いていない。僕にそういう物語をつづらせてくれた伊藤くんに、本当に感謝です」と心を込めると、伊藤も瞳を潤ませた。
阪本監督が「バラ、返します」と感謝の証として、まさかのプレゼント返しをすると、伊藤も会場も大爆笑。「バラ、帰ってきちゃった」と微笑んだ伊藤は、声を震わせながら「本当にうれしいです。なんでこんなに自分は人に恵まれているんだろうなと思う。これから先もすてきなものを届けることが、自分の使命だと思っています。これから先も芝居、映画、ドラマなど、すてきなものを皆さんに届け続けられる、現場にい続けられる役者になっていきたいと思っています。これからも皆さん、よろしくお願いします」と深々と一礼し、万雷の拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝