初来日のマイケル・ムーアが東証ホールで熱血会見
お金をテーマにしたドキュメンタリー映画『キャピタリズム マネーは踊る』(12月5日公開)で、マイケル・ムーア監督が初来日。映画の内容に合わせて東京証券取引所内東証ホールで記者会見を行った。ムーア監督は、日本に到着早々、荷物がなくなったり、税関で指紋押捺を求められて足止めをくらったりしたことを激白し、会場を笑いの渦に巻き込んだ。
「なんで今日こういう(カジュアルな)格好をしているかというと、飛行機の荷物の積み残しのトラブルがあって。“J”から始まって“L”で終わる日本の航空会社だけどね(笑)。で、僕はこういう体格(身長191cm体重○○○kg)で、日本で洋服を買うのが難しいから、力士が行くという店で服を買ったんだよ。変な服装をしてますが、ご了承ください(会場・爆笑)」。
東京証券取引所で来日記者会見を開催できたことについては、「光栄だよ」とご機嫌にコメント。「NYの証券取引所は入ることもできず、立ち入り禁止だからね。ここで会見をやるって言われた時、『それって冗談なの?』って思ったし、実際何の問題もなしに入れたのでとても驚いたよ」。
こういった具合に記者会見では、ムーア監督のマシンガントークが炸裂。たとえば、ムーア監督は医療問題を糾弾した『シッコ』(07)も撮っているが、日本の医療システムがしっかりしていることを強調。「アメリカの現状は7秒半に1家族、家から強制退去させられている。現在、アメリカの家を失う理由、自己破産する理由の第1位は、医療費が高すぎて払えないことなんだ。でも日本は、社会的にセーフティネットを構築してるからその心配はない。なぜ、アメリカだけこうなのか?と、僕は作品の中で永遠のテーマとして描いていくよ」。
続けてこう訴えた。「アメリカの現状には目を覆いたくなる。日本で殺人件数が増えてたとしてもアメリカの比じゃない。アメリカでは年間1万5000件殺人事件が起こっていて、さらに銃による自殺が1万5000件くらいある。僕はいつもなぜだ?と常に問いかけてるよ」と、銃社会の問題を取り上げた『ボウリング・フォー・コロンバイン』(02)を思わせるようなコメントも披露。会見はQ&Aというよりも、ムーア監督の独壇場という感じだった。
その後、株取引をしているというタレントの小倉優子が登場し、ムーア監督に花束を贈呈した。小倉優子は映画について「本作では、サブプライムローンやリーマンショックなどが描かれていますが、ニュースを見てない人にもわかりやすく見れると思います」と映画をアピール。
最後に、ムーア監督は改めて『華氏911』(04)よろしく戦争反対を訴えかけた。「今、世界が苦しんでるひとつの理由がブッシュ政権のせいだと思う。ブッシュ元大統領のことを日本などの国々がサポートしたことにより、戦争を正当化してしまった。でも、僕は日本という国を昔から尊敬している。平和な国だし、昔の正しい道を行く日本に戻ってほしい」と言い、鳩山首相にもエールを贈った。
とにかくムーア監督の情熱がひしひしと伝わってきた本会見。経済アナリストの森永卓郎も前説で「金融資本主義のドロドロの悪をこれだけすぱっと切り取って見せた映画はない」と大絶賛していた本作だが、これを観たら改めて、不況になった元凶を再認識できるかも!? 【Movie Walker/山崎伸子】