役所広司、『峠 最後のサムライ』公開に感無量!いい役に恵まれ続け「本当に運がいい」と笑顔
司馬遼太郎のベストセラー小説「峠」を、黒澤明監督作品で助監督を務めたことでも知られる小泉堯史監督が映画化した『峠 最後のサムライ』。本作の公開御礼舞台挨拶が6月18日に丸の内ピカデリーで開催され、役所広司、松たか子、香川京子、田中泯、榎木孝明、AKIRA、小泉監督が登壇。2018年に撮影され、コロナ禍の影響によって3度の公開延期を経て、ついに公開となった本作。役所が「撮影したのは3年くらい前です。昨日、初日を迎えることができました。とても緊張しています」と感無量の面持ちで語った。
幕末の風雲児と呼ばれた、越後長岡藩家老の河井継之助を描く本作。倒幕の時代に、サムライとしての使命と庶民を先導するリーダーとしての狭間で葛藤しながらも、継之助が強大な武力を誇る明治新政府軍に立ち向かっていく。
継之助役の役所は、「家庭人としての継之助さんは、ほとんど家にいなかったような人なんですが、それでも妻のおすがは、継之助さんがいるだけで楽しくてしょうがないという妻なんです。“亭主元気で留守がいい”という広告もありましたが、まったくその逆で、とにかくそばにいてくれると幸せ」とにっこり。「こういうふう関係を築いた継之助さんは、とても魅力的な男だったんじゃないかと思います」と演じた役柄の魅力を分析。
継之助を支えた妻、おすがを演じた松は「私は、役所さんが生きられた継之助さんを見ていた。役所さんを見ているのか、継之助さんを追いかけているのか、両方が混ざる」と楽しそうに切りだしながら、「継之助さんは、いつも目が輝いていて。その目でニコッとされると、たぶん女性も男性もこの人のためになにかをやりたくなってしまうような、目の吸引力があって。どうしても目で追ってしまうチャーミングなところがある」という。役所は「継之助さんは、後ろめたいことがたくさんあったんでしょうね。だからニコニコ、キラキラした目で見たんだと思います」と息ぴったりに松の話に応じていた。
また継之助がおすがを芸者遊びに連れていき、カンカン踊りを一緒に踊る場面に話が及ぶと、役所は「汗が出てきた。覚えるのにすごく苦労した」と苦笑いしつつ、「一発オッケーだったんです。僕はちょっとズレてはいるんですが、松さんはその日、撮影の前に覚えて、あっという間にパーフェクトな踊りをしていました」と松の踊りを大絶賛。松は「私の踊りは浅いですから」と照れながら謙遜し、「楽しく踊ることができました。監督が『前向きに踊っていいんじゃないですか?』と背中を押してくださった」と小泉監督に感謝していた。
妻を芸者遊びに連れていくという展開に、継之助の母を演じた香川は「親だったら『そんなことをしてはいけない』と言う立場。でも継之助さんの自由な生き方は、すばらしい魅力」と笑顔。継之助の父役の田中は「お父さん役ということにやや不服を持っています」とお茶目にコメントする場面もあり、周囲も爆笑。「父親としては、嫉妬するくらいステキだった。変わってほしいくらい(笑)。継之助の内面には苦しみ、語らずにいる深みがある」と役所演じた息子、継之助に惚れ込んでいた。
AKIRAも「まっすぐなところが魅力的」と語るなど、役所演じる継之助に魅了されていた登壇者陣だが、榎木は「役所さんとは、同じ年生まれの同じ月生まれで。役所さんのほうが、5日間だけ早く生まれたお兄さん」だという。「現場でいろいろとお話をした。役所さんに『ずっといい役が続いているよね』と話したら、役所さんは『僕は運がいいだけですから』と。その運を引きつけるのも実力のうち。とてもかっこいいなと思っていました。私もこの作品に出会えて、とても運がよかった」と心を込めると、役所は「飯を食った時かな」と榎木と顔を見合わせ、「僕は本当に運がいいんですよ。いつ運が尽きるかとドキドキしながら生きています」と微笑んでいた。
取材・文/成田おり枝