北米興収ランキングは『エルヴィス』と『トップガン』が熾烈なデッドヒート!
先週末(6月24日から26日)の北米興収ランキングは、あまり例を見ない大接戦が繰り広げられた。日曜日に発表された3日間の興収速報値の段階では、24日に封切られたばかりの『エルヴィス』(日本公開中)と、公開5週目を迎えた『トップガン マーヴェリック』(日本公開中)がどちらも興収概算3050万ドルで肩を並べていた。そして月曜日になり、ようやく正式な数字と共に勝者が発表。『エルヴィス』が見事に北米初登場Vを飾ることとなった。
バズ・ラーマン監督が『華麗なるギャツビー』(13)以来9年ぶりに手掛けた劇場用映画『エルヴィス』は、タイトルからも分かる通り1950年代後半から1970年代にかけて活躍した伝説のロックスター、エルヴィス・プレスリーを描いた物語だ。3日間の興行収入は3121万1579ドルで、「Hollywood Reporter」の報道によれば観客の56%が35歳以上。もっといえば全体のおよそ3割が55歳以上の観客と、コロナ禍で映画館から遠のき、徐々に戻りつつあった年齢層を一気に取り戻す起爆剤となったようだ。
早い段階から賞レース入りが期待されてきた同作の評価はどのようなものか。批評集積サイト「ロッテン・トマト」を参照してみると、批評家からの好意的評価は78%とまずまずだが、観客からのそれは94%。音楽伝記映画という共通点で比較されそうな『ボヘミアン・ラプソディ』(18)がそれぞれ60%と85%でありながら、賞レースで大健闘したことを踏まえれば、『エルヴィス』は安全圏にいると考えることができる。とりわけゴールデン・グローブ賞での活躍、そしてエルヴィス役のオースティン・バトラーの主演男優賞レース参戦は確実ではないだろうか。
そんな『エルヴィス』に150万ドルほどの差で2位に惜敗した『トップガン マーヴェリック』だが、この週末も興収2961万ドルと前週比33.7%減という低いドロップ率を維持。北米累計興収は5億2000万ドルを突破し、全世界興収でもトム・クルーズ作品として史上初めて10億ドルの大台に突入。現時点では『ダークナイト』(08)を上回り全世界歴代49位だが、まだまだ衰える気配のない勢いから、どこまで順位を上げていくのかが今後の注目ポイントとなりそうだ。
そして3位には公開3週目の『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(7月29日日本公開)が入り、こちらも3日間の興収は2672万ドルと『トップガン マーヴェリック』に300万ドルほど迫る接戦を演じ、北米累計興収3億ドルを突破。4位に初登場したブラムハウスの新作『ブラック・フォン』(7月1日日本公開)も興収2363万ドル、5位の『バズ・ライトイヤー』(7月1日日本公開)も興収1815万ドルと、上位5タイトルが僅差でしのぎを削るかたちとなったわけだ。
ちなみに興収ランキングで4つの作品が興収2000万ドルを超えたのは、『シュガー・ラッシュ:オンライン』(18)が首位を飾った2018年の感謝祭週末以来のこと。その週は時節的にファミリー向け作品の強さが際立ったが、今回はファミリー向け作品もありつつ若者向けや年長者向け、そして世代を超えたシリーズ作品とがいずれも同じぐらい盛り上がりを見せる結果に。サマーシーズンらしい賑わいが、確かに映画館に戻ってきている。
文/久保田 和馬