崔洋一監督、フィルメックス総評に込めた映画への想い
第10回東京フィルメックスの閉会式が11月29日に有楽町朝日ホールにて行われ、コンペティションの最優秀作品賞にヤン・イクチュン監督の『息もできない』が選ばれた。
総評として、審査委員長で映画監督の崔洋一は、「クオリティ、バラエティに富んだ今日(こんにち)の映画に触れるというのは、今世界で何が起こっているのかを知るとても刺激的な行為そのものでした。多様性がある、ダイナミックな、力みなぎる大切な映画が、確かにここに存在しているということです」と総括した。
また、「(コンペティションの監督たちの)鋭敏な感覚というものは、我々のよく知るオーソドックスな手法を超えた新しい“映画的世界観”に見てとれ、改めて実験精神の貴さを教えてくれたと思います」と強調。テレビドラマ的な安易な手法に走らない表現を賞賛した。
「きわめて論理性に富む物語が、私たちの存在や探求心を試しているのではないかというくらいスリリングで緊張した時間を提供してくれたと思います。多様性と世界の変化、これはある種矛盾した時間と空間を作り出すと思うのですが、そういう現在を生きる作家たちの過酷さ・覚悟、さまざまな問題意識を共有できたと思います」と語った。
映画に必要とされている重要な要素、興奮させる刺激的な要素が、崔監督の口から端的に語られた。今後ますます“良質”な作品が制作されることをぜひ期待したい。【Movie Walker/堀田正幸】
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