「軽い気持ちで観ないで」「これまでで一番怖い」…SNSで話題の台湾ホラー『呪詛』に映る“恐怖”の正体

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「軽い気持ちで観ないで」「これまでで一番怖い」…SNSで話題の台湾ホラー『呪詛』に映る“恐怖”の正体

Netflixで7月8日に配信がスタートしてから1週間。SNS上では「これまで観た映画で一番怖い」「相当やばい」「夜に一人で観てはダメなやつ」「軽い気持ちで観ない方がいい」などの恐れ慄く声が多数あがり、Netflixの視聴ランキング「今日の映画TOP10(日本)」ですでに幾度も首位を記録している台湾発のホラー映画『呪詛』(配信中)。一体これはどんな映画なのか、メガホンをとったケヴィン・コー監督が語る本作のねらいと共に紹介していこう。

主人公はある宗教施設で禁忌を破り、その呪いを受けることとなったリー・ルオナン。それから6年の月日が経ち、恐ろしい呪いが自分の娘に降りかかったと知った彼女が娘を守ろうとする姿が描かれていく。今年3月に台湾で劇場公開されると、「いままででもっとも怖い台湾ホラー」と評され歴代の台湾ホラー最高の興行成績を叩き出す大ヒットを記録。先日発表された台北映画祭では長編映画賞など7部門にノミネートされ、助演男優賞と美術賞を受賞した。

本作は2000年代に台湾南部のとある町で起きた、あるカルト教団の家族にまつわる実話から着想を得ているという。「信仰に対する敬意、特に宗教上の禁忌や深い謎に包まれた宗教には、恐怖心がいくらか混ざっているものです。私は怖い物語が大好きですが、こうした題材に手を出せずにいました。この畏れの感情を、『呪詛』で最大限に生かしたいと思ったのです」とコー監督は語る。その実在の事件に、掲示板やYouTube、チェーンメールなどのインターネット文化を織り交ぜ、「現実世界の結果は、見るものの意思によって形作ることができる」というテーマが掲げられた。


一度観たら忘れられない恐怖…モキュメンタリーの手法が臨場感を増幅させる
一度観たら忘れられない恐怖…モキュメンタリーの手法が臨場感を増幅させるNetflix映画『呪詛』独占配信中

近年ではナ・ホンジン監督の『哭声/コクソン』(16)やアリ・アスター監督の『ミッドサマー』(19)、日本では清水崇監督の「恐怖の村」シリーズなど、宗教的な恐怖や土着的な因習にまつわる恐怖を描くホラーが大きな話題を呼んでいる。本作ではそこに『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(99)や「パラノーマル・アクティビティ」シリーズで用いられたファウンドフッテージというモキュメンタリー映画の手法が取り入れられ、ますます“観てはいけないものを観てしまう”怖さに苛まれる仕掛けが施されている。

「効果的なホラーシーンをつないで視聴者を怖がらせることは簡単です。しかし良質なホラー映画は、トリックがすべてではありません。核となるべきは、そこにある人間の性なのです。つまりは視聴者が登場人物に感情移入できるかどうかなのです」と、「リング」シリーズなどのJホラー作品や、ハリウッドリメイクもされた香港ホラー『the EYE【アイ】』(02)などのアジアホラーから多大な影響を受けたことを明かす。「アジアのホラーには、ある種の柔らかさがあり、恐怖を感じさせながら私たちを感動させたり癒したりさえするものです」。

恐ろしい呪いは幼い娘へと降り掛かり…
恐ろしい呪いは幼い娘へと降り掛かり…Netflix映画『呪詛』独占配信中

さらにコー監督は「ホラーというジャンルが国を超えて受け入れられるのは、死や不可解な力に対する恐怖。そして『呪詛』の登場人物や母子の絆のような人間関係への共感といったものがそこにあるからでしょう。自分の作品が世界を駆け巡り、ホラーファンが一人残らず夜眠れなくなる。そんな日をずっと夢見てきました」と、本作がNetflixで世界中のホラーファンに届けられたことへの期待感を語っている。

『返校 言葉が消えた日』(19)や『呪われの橋』(Netflixにて配信中)、『哭悲/THE SADNESS』(公開中)など、攻めに攻めたホラー描写でここ数年大いに活気付いている台湾のホラー映画界。その真骨頂ともいえる『呪詛』は、すでにコー監督のメガホンのもとで続編の準備が着々と進行しているという。まずは百聞は一見にしかず。“呪い”に触れる覚悟ができたらNetflixを起動し、一つ深呼吸をしてから再生ボタンを押してみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬

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