北米興収は『ソー:ラブ&サンダー』がV2達成!新作3タイトルは明暗が分かれる結果に

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北米興収は『ソー:ラブ&サンダー』がV2達成!新作3タイトルは明暗が分かれる結果に

先週末(7月15日から17日)の北米興収ランキングは、前週1億4000万ドル超のオープニング興収で首位デビューを飾ったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)作品『ソー:ラブ&サンダー』(日本公開中)が2週連続Vを達成。北米累計興収は2億3300万ドルを突破し2022年公開作の第6位となり、全世界興収も5億ドルを突破した。

ロケットスタートを切った前週から1億ドル近くも興収を落とした『ソー:ラブ&サンダー』
ロケットスタートを切った前週から1億ドル近くも興収を落とした『ソー:ラブ&サンダー』[c]Everett Collection/AFLO

累計興収としては立派な数字を記録している『ソー:ラブ&サンダー』だが、2週目末3日間の興収は4663万2171ドルと、前週から1億ドル近く、67.7%減という大きなドロップに。直近に公開された他のMCU作品も『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』が1週目末から2週目末で67%減。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』も67.5%減と、それぞれオープニング興収に差はあるとはいえ奇しくもほぼ一定のドロップ率となっている。

もっとも本作は作品評価が少々伸び悩んでおり(批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば批評家からの好意的評は68%、観客からは78%にとどまり、『ドクター・ストレンジMoM』をも下回る)、一部ではMCU作品全体の低迷を危惧する声もあがるほど。ディズニープラスで配信のドラマシリーズが視聴数も批評面も好調なだけに、劇場公開作の不安定さは今後のMCUの展開を大きく左右することになるかもしれない。


【写真を見る】本屋大賞翻訳小説部門1位の「ザリガニの鳴ところ」が実写映画化!気になる作品評価は…
【写真を見る】本屋大賞翻訳小説部門1位の「ザリガニの鳴ところ」が実写映画化!気になる作品評価は…[c]Everett Collection/AFLO

さて、先週末は3作品の新作が初登場を果たした。最上位の3位にランクインしたのは、2021年に本屋大賞翻訳小説部門1位に輝くなど日本でも人気を集めているディーリア・オーエンズの「ザリガニの鳴くところ」を、新進女優デイジー・エドガー=ジョーンズ主演で映画化した『Where the Crawdads Sing』。

3650館で1725万ドルのオープニング興収はまずまずだが、評判の原作に比較的忠実でありながら批評家からの評価は伸び悩んでいる模様。4370万ドルと推定される製作費を回収するためには、かなり息の長い興行が必要となりそうだ。

個性派俳優が集結したアニメ『Paws of Fury』は批評&興収ともに不発に
個性派俳優が集結したアニメ『Paws of Fury』は批評&興収ともに不発に[c]Everett Collection/AFLO

また6位に初登場したアニメ『Paws of Fury: The Legend of Hank』も3475館で興収631万2060ドルと、かなり鈍い出足に。メル・ブルックスの西部劇コメディ『ブレージングサドル』(74)からインスパイアされた動物アニメであり、当初は2017年公開予定だった作品がようやく完成。マイケル・セラやサミュエル・L・ジャクソン、ミシェル・ヨー、そしてブルックスも声の出演をする濃いメンバーが集まりながらも苦戦を強いられている。

あえてほかのアニメ作品のオープニング興収と比較するのであれば、ライカ制作の『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』(19)が3413館で594万ドル、ルーカスフィルム制作の『Strange Magic』(15)が3020館で550万ドルと近いものがある。忌憚なく言えばどちらも興行的な(後者は批評面でも)失敗作であるが、前者は批評家から大絶賛を浴びてアカデミー賞長編アニメ賞候補に。『Paws of Fury』の批評面での評価は、両作のちょうど中間ぐらいとやや凡庸。どんなに甘く見積もっても賞レース参戦の可能性はゼロに等しいだろう。

レスリー・マンヴィルの演技に絶賛の声!『Mrs.Harris Goes to Paris』は9位に初登場
レスリー・マンヴィルの演技に絶賛の声!『Mrs.Harris Goes to Paris』は9位に初登場画像は『Mrs. Harris Goes to Paris』(@mrsharrismovie)公式Instagramのスクリーンショット

公開規模の関係もあり順位では負けてしまったが、9位にランクインした『Mrs.Harris Goes to Paris』は批評面で大成功。『ポセイドン・アドベンチャー』(72)などで知られる作家ポール・ギャリコの代表シリーズの一編「ハリスおばさんパリへ行く」を原作に、1950年代のロンドンでディオールのドレスに魅せられパリへ渡る掃除婦をユーモラスかつチャーミングに描く。

「ロッテン・トマト」によれば批評家の94%から、観客の93%から賛辞を獲得。とりわけハリスおばさん役を演じるレスリー・マンヴィルの演技に評価が集中しており、ゴールデン・グローブ賞(ミュージカル・コメディ部門)の有力候補、あるいはアカデミー賞にも駒を進める可能性があると目されているほど。今後本格化していく賞レースを追う上で、覚えておくべき一本となるはずだ。

文/久保田 和馬

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