名塚佳織&Adoが語り合う、二人一役で作り上げた“歌姫”ウタと「ONE PIECE」への熱い想い
7月で連載開始25周年を迎えた大ヒットコミックの、劇場版アニメ15作目となる『ONE PIECE FILM RED』(8月6日公開)。原作者の尾田栄一郎が総合プロデューサーを務める本作でキーパーソンとなる、シャンクスの娘で世界的な歌姫“ウタ”は、ボイスキャストを名塚佳織が、歌唱キャストを歌い手のAdoが担当し、二人一役で新たなヒロインに命を吹き込んだ。ウタを演じるうえで、芝居と歌唱に「違和感」が生じないことを意識したという2人がどのようにキャラクターを作り上げていったのか、独占インタビューで尋ねた。
「“違和感のないように”が一番意識したところ」(名塚)
――台本や資料から物語の全体像をどのようにイメージしましたか。
名塚「台本の前に、ウタの幼少期の設定資料やウタの年表をいただきました。尾田先生のイラスト入りだったのですが、そこからウタの雰囲気やどんな人生を送り、いまに至るのかを知ることができたので、台本の段階から物語に入りやすかったです。ですが、同時にみんなに影響を与えているウタという存在を演じるのはものすごく責任重大で、プレッシャーを感じました。いつもならいちファンとして『ONE PIECE』の世界に入り込んで楽しめるのですが、重要な役で作品に関わってしまったことにより、責任の一部を担っていると思うと、正直フラットな感覚では台本を読むことができませんでした(笑)」
Ado「設定資料があったので、幼少期のウタがどんな子だったのか、とてもイメージしやすかったです。台本を読んだ時には、ウタがシャンクスの娘であるという事実に『えーっ!』と驚きました。それこそ、みなさんが驚いていたのと同じ感じです (笑)。音楽をテーマにすることで、また新しい『ONE PIECE』の魅力が生まれると想像するだけでワクワクしましたが、私も名塚さん同様、作品の一部、しかも世界で愛されている歌姫の歌唱パートという大役に対しての責任を強く感じ、本当にすばらしいものを作らなければいけないというプレッシャーがありました」
――ウタを作り上げるうえで、どのようなアプローチをしていったのでしょうか?まったく違和感がなく、2人で演じられていることを忘れてしまうほどでした。
名塚「“違和感のないように”が一番意識したところなので、そういう感想は本当にうれしいです。私はAdoさんがウタとして歌う時の音域を参考にさせていただきました。かなり低い音から高い音まで使われているという印象がありましたが、私は地声が高いので興奮するとどうしても声が高くなりがち。感情的になるシーンでのセリフは、Adoさんが高い声で歌唱している部分を参考にしました。同じ高い音でも裏声を使うところもあれば、地声で発しているところもあってすごく興味深かったです。セリフに地声の雰囲気を取り入れることができたら、しゃべりと歌唱の切り替わりが違和感なく表現できると思い、監督と相談しながらウタの声を探していきました」
Ado「私は先にレコーディングしていたので、むしろ名塚さんに合わせていただいた形です。ウタはこんな歌い方でいいのか、行き場のない不安を抱えつつ、違和感が生まれないように、Adoが強すぎないようになっていればいいな、という思いのなか、歌いました。歌唱と芝居に違和感がなかったという感想を聞いてホッとしました。名塚さんのおかげだなと改めて感謝しています。ありがとうございます!」
名塚「いや、こちらこそありがとうございます、です。先に歌を収録するのは本当に難しかったと思います。Adoさんが自信を持って歌ってくださっていたからこそ、ブレずに歩み寄ることができたと思っています。芝居と歌唱をちょっとずつ録っていたら、どちらに寄り添えばいいんだろうとブレてしまったかもしれません。『ウタはこれで行きます!』という指針があったので、私はすごく助かりましたし、だからこそ同じ方向に進めた気がしています」
Ado「うれしいです、本当によかったです…。名塚さんのウタのお芝居のあとに、私の歌声が流れ、また名塚さんのお芝居に戻るという、一連の流れになったものを初めて聴いた時は、すごくビックリしました。知らない自分がそこにいるような感覚というのでしょうか。名塚さんのお芝居が入ったことでウタがキャラクターとして完成したと感じ、そこでようやく安心しました。同時に、『ウタ、めちゃくちゃいいキャラクターだ!』と思いました」