宮崎あおい「いまの私があるのは、青山監督に出会ったから」第44回PFFの青山真治監督特集上映に向けてメッセージ
若手映画監督の登竜門として知られる映画祭「第44回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)2022」が、9月10日(土)から25日(日)まで東京・国立映画アーカイブにて開催される。8月3日にはラインナップ発表会が行われ、「PFFアワード2022」の最終審査員を務める三島有紀子監督、招待作品部門のメイン特集を共催するイタリア文化会館のアルベルト・マナイ、PFFディレクターの荒木啓子が出席。また今年3月に逝去した青山真治監督の特集上映に向けて、宮崎あおいからビデオメッセージが到着した。
“映画の新しい才能の発見と育成”をテーマに、1977年にスタートしたPFF。世界でも類をみない自主映画を対象としたコンペティション「PFFアワード」は、これまで森田芳光や黒沢清、塚本晋也、佐藤信介、李相日など160名を越えるプロの映画監督を輩出してきた。「PFFアワード2022」では520本の応募作品のなかから16作品が選出され、入選作品は「第44回ぴあフィルムフェスティバル2022」9月の東京会場で2回、11月の京都会場で1回のスクリーン上映が行われる。また今年もDOKUSO映画館、U-NEXTでの配信が予定されている。
荒木は「初めて撮った人が多い。半数以上が初監督作品だった」と今回の応募作の特徴を明かし、「コロナ禍で時間ができて、いままで映画を撮ってみたかったと思っていた人が、初めてやってみようと思ったということ。コロナ禍によって考える時間、夢を実現する時間ができたということに感動しています」とコメント。「いままで温めていたものが爆発して、力のある作品になっている」と語る。「PFFアワード2022」の最終審査員を務める三島監督は、審査のポイントについて「その人自身の特別な眼差しがあること。その人だけの表現方法を持っているかが、私にとっては大事なポイント。感覚的なことで表現させていただくと、なんかずっとその映画のことを考えたくなる。描かれた人物のことをずっと考えたくなる、ひいてはその人物を通していまの社会を考えたくなるような映画」だと説明していた。
今年3月21日に逝去した青山真治監督の特集上映では、フランスで製作され、未ソフト化&未配信の『赤ずきん』(08)や、『私立探偵濱マイク 名前のない森』(02)の71分の映画版ロングバージョンなどスクリーンで上映される機会の少なかった個性あふれる5作品が、35mmフィルムで上映される。会場には青山作品と縁の深い女優、宮崎あおいからビデオメッセージが届けられた。
宮崎は「青山監督とは、2000年の『EUREKA(ユリイカ)』で初めてお会いしました。そして『サッド ヴァケイション』『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』と3作品でご一緒させていただいた。いまの私があるのは、青山監督に出会って、青山組のかっこいいスタッフの方に出会ったから、こうしてお仕事を続けているんだろうなと思います。私にとって、本当に大切な人です」と特別な存在であるという。「すばらしい感覚をお持ちだった青山監督がつくられた作品を、若い世代の方にも観ていただきたい。また過去に観たことがある方も、きっと自分の年齢が変わったり、置かれた環境が変わったりするなかで、作品の感じ方も変わったくるんじゃないかと思う。私自身も『EUREKA(ユリイカ)』を数年おきに観ている。ますます『EUREKA(ユリイカ)』のことを好きになっていくし、そういう作品をつくった青山監督のことも好きになっていく」と実感を込めていた。
またピエル・パオロ・パゾリーニ生誕100年を記念して、日本初上映となる作品を交えながらその魅力を紹介する企画「ようこそ、はじめてのパゾリーニ体験へ」も用意された。荒木は「権利も複雑なので、コンプリートは無理だろうと諦めかけていた。イタリア文化会館のご協力を得て、ほぼコンプリートに近い特集を組むことができた」と感謝しきり。マナイは「パゾリーニは、20世紀イタリア文化のなかでも特異な存在。映画監督であり、詩人、小説家、論客としても有名です。様々な分野で大きな足跡を残し、非常に斬新なものをイタリア文化にもたらした」とパゾリーニを紹介。イタリア社会の変遷に注目していた監督であると共に「矛盾を内包していた存在でもある。それが作品にも反映されている」と特徴を挙げ、「イタリアでも引き続き、議論、研究されている存在。イタリアにとっても、大きな文化的財産」と話していた。
そのほか、ピーター・バラカンの解説で音楽映画を堪能するシリーズ「ブラック&ブラック」や、「PFFスペシャル映画講座」として、『PLAN 75』の早川千絵監督と水野詠子プロデューサーによる「日本に少ない、短編を長編にする試み」と題した講座、藤元明緒監督とgnome代表の村田悦子による「人生を変えた映画」を語る講座、音響技師の菊池信之と長嶌寛幸を招いた「青山真治の音響、そして音楽」と題した講座など、あらゆる角度から映画を知り、楽しむ企画が予定されている。
取材・文/成田おり枝
※宮崎あおいの「崎」は立つ崎が正式表記