いまだから話せる!『ONE PIECE FILM RED』ウタ役・名塚佳織が心を掴まれたシーンは「ルフィとシャンクスの共闘」
「ルフィとシャンクスが一緒の空間にいるのを私は生で見ているんです!」
『ONE PIECE』ファンの名塚がグッと心を掴まれたシーンは「ルフィとシャンクスの共闘」。ウタワールドにいるルフィと現実世界にいるシャンクスが、歌の魔王トットムジカを倒すため時空を超えて闘う。「すごく熱くなる瞬間です。2人が出会えないなかで、心はどこか通じ合っている。実際に同じ場所にはいないけれど、お互いに見えているような感じ、お互いのことを感じ合っているのがわかるあの瞬間は、すごく素敵だと思います。ルフィ役の田中真弓さん、シャンクス役の池田秀一さんは一緒に収録しているので、実際には隣にいるんです。ルフィとシャンクスが一緒の空間にいるのを私は生で見ているんです!最初は名塚として『2人が一緒にいる!カッコいい!』と興奮しちゃって(笑)。本当にすばらしい体験でした。とはいえ、ウタの収録中だったので、すぐにウタの気持ちで2人のやりとりを聞くようになったのですが、そうなるとやっぱり胸がいっぱいになりました」。
ウタのシーンでは「シャンクスがウタを止めに入る瞬間」に心を奪われたという。「すごく好きなシーンだけど、ウタの心情的にはその後のセリフにもあるように『会いたくなかった、でも会いたかった』なんです。ウタらしさがありつつ、ちゃんと本心も言えた瞬間で、私は大好きなセリフです。それまではウタって結構強がっていたし、意地も張っていたし、スタートを切ってしまったからには『もう戻れない』という気持ちもあります。ルフィやシャンクスが止めにきてくれても、『もう、後戻りできないんだよ!』と、自分の中でもどうしていいかわからなくなり、ちょっとパニックになっています。だけど、あのセリフを言った瞬間だけ、シャンクスに甘えられたのかなと思えたし、そこで肩の荷がおりたような気がしました。
一人でやり遂げるつもりでいたけれど、やっぱり助けてほしかった…という気持ちが上回るというのかな。一人の力で世界を変えるのは難しい。仲間や家族が必要だということを、ウタが素直に思えた瞬間のように感じています。自分のやり方が完全に正しいわけじゃないとわかっていながら、みんなが幸せになれる最善の方法だと考えスタートさせた計画。本当はそうじゃないという結果が見えてきて、悔しさ半分、うれしさ半分みたいな心情が見えるシーンでした」
前回のインタビューでは、好きなキャラクターについては「いろいろなキャラクターに恋をして、最終的にはサンジに落ち着いた」と語っていた名塚。『ONE PIECE FILM RED』を経て、恋するキャラクターに変化はあったのだろうか。「映画で麦わらの一味と赤髪海賊団がフィーチャーされているのを観て、最初のころ、みんなが仲間になっていくエピソードを全部読み返しています。実はもう2ターン目で(笑)、サンジのところをじっくり読んでいます。やっぱり彼氏としてはサンジが一番なのですが、『ONE PIECE FILM RED』では、ウソップもいいなって。お父さんとウソップが『重なっていく、重なっていく』と大興奮しながら本編を観ました。シャンクスはカッコいいけれど、ウタ役を演じてからはやっぱりお父さんとして見ちゃいます」。
「シャンクスがウタを置いていくのは、自分が罪を被る意味もあったけれど、ゴードンのためでもあった気がしています」
舞台挨拶などで、ルフィ役の田中はウタ役を大絶賛。シャンクス役の池田からの「素敵な娘ができた」と感謝の言葉も印象的だった。「プレッシャーのあまり、必死にウタのことだけを考えて突っ走ってきてしまったと反省しています(笑)。周りの皆さんがウタを通して、私のこともひっくるめてケアしてくださっていることに、後からたくさん気づかされました。武道館でのワールドプレミアのときも、緊張しすぎてガチガチになっていたのですが、ほかのキャストの方たちが『頑張ったね』とたくさん言葉をかけてくださって…。皆さんが受け入れてくださったことが本当にうれしかったです。ウタのアフレコが始まる前に、フランキー役の矢尾(一樹)さんや、ゴードン役の津田(健次郎)さんから、『頑張って!』とメッセージをいただいたりもして。ずっと皆さんが気にかけてくださっていたことに、心から感謝しています」。
リピーターも続出しているなか、名塚の「何度でも観たい!」シーンを教えてもらった。「幼少期のウタとシャンクスがエレジアに行った時の会話です。『残ってもいいんだぞ』というシャンクスに『そうじゃない』と返すウタ。あのシーンはすごく好きで、何度も観たくなります。シャンクスの優しさも感じられるし、ウタにはすごく迷いが見える。自分にとってはとても魅力的な場所だけど、シャンクスたちがこの場所に留まることはないことはわかっているウタ。シャンクスと一緒にいたい、エレジアへはまたいつか来ればいいという気持ちを必死に伝えようとした時、その言葉を伝える前に『わかった』と抱きしめてくれるシャンクス。すごく短いシーンですが、2人の想いが通じ合っている感じが好きです。
だけど、事件が起き、シャンクスはウタを置いていく決断をします。ここからは私の勝手な深読みなのですが、シャンクスがウタを置いていくのは、自分が罪を被る意味もあったけれど、ゴードンのためでもあった気がしています。ゴードンの生き甲斐のために、そしてウタのためにも置いていく決断をしたと考えると『はーーあ、シャンクス!!!』ってなりますよね(笑)。大事に大事に自分を育ててくれたゴードンに対して、まるで反抗期のように反発しているウタですが、最終的にはゴードンの想いもウタにしっかり届いていると感じられる、その関係性も素敵だなと思っています」。
取材・文/タナカシノブ