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「異世界おじさん」が生むシュールな笑いの正体とは?“90年代”ヲタクとZ世代のギャップがおもしろい

コラム

「異世界おじさん」が生むシュールな笑いの正体とは?“90年代”ヲタクとZ世代のギャップがおもしろい

90年代の懐かしいトピックが次々と登場

また、劇中には90年代を思い出させるキーワードも多数登場し、30代のおじさんより上の世代を歓喜させている。例えば、第1話でスマホの便利さに対して「“文豪ミニ”も進化したよな」や、「トゥギャザーしようぜ」というセリフなど。文豪ミニはNECが発売した小型のワープロで、パソコンが一般化する前は「ワープロで文章を打っていたな~」と懐かしく思った人も多いだろう。「トゥギャザーしようぜ」はタレントのルー大柴による一世を風靡した名フレーズ。なんのことかわからず、たかふみたちはぽかーんだが、「そこを出してくるか!」という絶妙なセレクトで、当時を知る視聴者はクスクス笑いが止まらない。

セガへの愛がハンパないおじさん(第2話「1位『ガーディアンヒーローズ」だろぉおおお!』)
セガへの愛がハンパないおじさん(第2話「1位『ガーディアンヒーローズ」だろぉおおお!』)[c]殆ど死んでいる・KADOKAWA刊/異世界おじさん製作委員会 [c]Hotondoshindeiru/KADOKAWA

おじさんのハンパない“セガ愛”がOP映像にも影響!

おじさんのセガに対する並々ならぬ愛情も、本作における重大な要素だ。セガは、『ソニック・ザ・ムービー/ソニック vs ナックルズ』(公開中)の元になった、テレビゲーム「ソニック」シリーズや「バーチャファイター」シリーズといった、人気ゲームを世に送り出してきたゲームメーカー。前島麻由によるオープニングテーマ「story」で流れる映像には、セガが開発した家庭用ゲーム機、セガサターンのOP映像をオマージュしたタイトルロゴからはじまるほか、「心霊呪殺師 太郎丸」など多数のセガサターンの名作ゲームがフィーチャーされており、熱心なゲームファンの間で話題となっている。セガはメガドライブやドリームキャストといったゲーム機も発売していたが、ソニーや任天堂とのシェア争いの末に撤退。そんな歴史も相まって、おじさんから語られるセガに関するマニアックな知識からは、どこか哀愁を感じずにはいられない。

「異世界おじさん」のおもしろさは、90年代で文化や概念がストップしてしまった34歳のおじさんと、19歳の甥たかふみによる世代間ギャップだろう。しかし、おじさんもたかふみも、相手が知らないからと言って、それを嘲笑ったりはしない。「そういう時代もあったんだ」「いまはこういう時代なのか」と、お互いを尊重し理解し合おうとする姿が描かれ、なんだかホッとする。このギャップは、会社の上司と部下、学校の先生と生徒など、社会の様々なところに置き換えることができ、世代を超えた対話の糸口になるかもしれない。しかしその場合、かなり偏った知識の共有になることは否めないだろうが、本作が世代を超えて楽しめる作品であることは明らかだ。

文/榑林史章

※記事初出時、人名表記に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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