馬糞・鉄パイプ・爆弾…ムーア監督、命がけの取材を語る(2/2)
まさに命懸けの取材を続けてきたわけだが、ムーア監督は恐怖感をどう乗り越えてきたのか?
「正直言ってしばらくの間、恐怖心への対応の仕方は下手だったよ。でも、ある時点から吹っ切れたんだ」と語る。
「僕はこれまでとてもいい人生を送ってきた。善人として生きてきて、かわいい娘も育ててきたし、映画を通して社会に貢献できたという自負もあった。それならたとえ今、人生が終わったとしてもいいじゃないかと。そう思えた瞬間から心の安らぎを得たんだ。たとえ殺されたとしても、もう僕から奪い取れるものなんて何もないと」。
でも、本作『キャピタリズム マネーは踊る』を撮ると決めた時は、周囲から「ウォール街を相手にしてはいけない」と大反対されたとか。「政治家を相手にするよりももっとひどいし、どうなっても知らないよって言われたよ。でもそこで怖がって何もしなくても、もしかして今日自分は交通事故や大地震で死んでしまうかもしれない。人間何が起きるかわからないからやろうと思ったんだ」。
そんなムーア監督を支援する人々はだんだん増えつつある。「僕はテレビや雑誌など媒体をもっているわけじゃないが、いろんな人からメールをもらい、話が聞ける。僕は決して特権階級出身ではないし、大学も出ていない。本来なら小さな(地元)ミシガンの町でゼネラルモーターズの部品を作って一生を終えていたかもしれない。でも今は、世界中のみなさんに一般市民の声を伝えられる立場にいる。だからその立場を大事にして、声なき声を責任をもって伝えていきたいんだ!」
あっぱれ、マイケル・ムーア監督! そんな弱きを守って強きをくじく姿勢に、世界中の人々が惚れ込むのだ。どうか、どんなことがあっても屈しないで! 久しぶりに胸に熱いものがこみ上げたインタビューとなった。【Movie Walker/山崎伸子】