「各話が1本の映画のよう」話題のドラマ「80日間世界一周」、贅を尽くした映像美の裏側
映画クオリティの映像を引き出したロケ&セット
コロナ禍のさなか、ロックダウンによって約8か月の撮影中断を余儀なくされた本作。雄大なロケーションのなかで行われた撮影と、最新のVFXを駆使して作り上げられた途方もなくリアリティに富んだ映像表現は、本作最大の見どころの一つ。参加スタッフは総勢3000人。製作費はおよそ4000万ポンド(約66億円)。映画クオリティの贅沢な映像が、物語への没入感をより一層高めてくれる。
ロケーション・マネージャーのケイト・フィフィは「南アフリカにはのどかなロケーションがたくさんあります。アメリカやインド、パキスタン、アフガニスタン、香港と、ひとつの風景で移動することができる。ケープタウンの郊外には砂漠地帯もあり、北の岬もすばらしいですし、美しい風景と広い眺望があって、とても恵まれているのです」と主な撮影場所となった南アフリカの魅力を語る。またルーマニアでも撮影が行われ、そちらではフランスの影響を強く受けたブカレストの建築を活用したという。
既存の建築物を活用することが、本作のスケールアップに一助を買っていると明かすのはプロダクション・デザイナーのセバスチャン・クラウィンケルだ。「ゼロから作るよりもすでに出来上がっているものから始めるほうがおもしろく、またより多くの資金を得ることができる。本作での大きな課題は、現存する良い場所をできるだけ多く見つけ、それを19世紀の興味深いセットにすることでした」と振り返る。
見た目だけでなくセットから漂うにおいに至るまで可能な限り“本物”を作ることにこだわったというクラウィンケル。アル・フダイダのセット制作では何度も下見をし、フォトショップで見え方を確認。そして職人に現地を調査してもらって詳細な図面を作成し、1872年の物語にフィットするのかを検証してから建築をはじめたとか。「役者がその場にいるような臨場感を出すのが好きだ」と語るクラウィンケルの言葉通り、コーマは「セットなのに自分が別の世紀にいるような気分」と大絶賛。
またクラウィンケルは、劇中で主人公たちが訪れる国々それぞれのコンセプトカラーについてのこだわりも語る。アラビアのアル=フダイダはすべてを金色に、インドではマスタード色とオレンジ色、香港は当時の史料から白を基調とし、ロンドンは単色でイタリアは緑、フランスは青と、それぞれテーマとなる色彩を決定していったという。「各エピソードを見分けるために、常にわずかな色の要素が含まれているというのがちょっとしたテーマになっています」。
ほかにも19世紀後半のファッションを見事に再現した衣装デザインや、『DUNE/デューン 砂の惑星』(21)でアカデミー賞作曲賞を受賞した映画音楽の巨匠ハンス・ジマーが手掛けたドラマティックな楽曲など、見どころが盛りだくさん。あらゆる贅を尽くして作り上げられた、この上なくエキサイティングな珠玉のアドベンチャー大作を、是非ともたっぷりと楽しんでほしい!
文/久保田 和馬