『ローガン』でヒュー・ジャックマンの渾身の役作りに監督が感嘆

インタビュー

『ローガン』でヒュー・ジャックマンの渾身の役作りに監督が感嘆

ヒュー・ジャックマンがローガンことウルヴァリンとして有終の美を飾る『LOGAN/ローガン』(公開中)。『X-MEN』シリーズの作品群とは一線を画し、ヒロイズムよりも人間の苦悩を浮き彫りにした本作は、大人もうなるシリーズ史上初のR指定作品となった。メガホンをとったジェームズ・マンゴールド監督にインタビューし、本作でつむがれた家族愛や老いなどのテーマについて話を聞いた。

治癒能力を失いつつあるローガン(ヒュー・ジャックマン)は、かつてないほど身も心も疲れ果てていた。そんなローガンが、絶滅の危機にあるミュータントの少女ローラや、プロフェッサーXことチャールズ・エグゼビアと共に逃避行を図る。彼らの行く手には強大な敵が待ち構えていた!

「ウルヴァリンは元々、身心共に傷を負っているキャラクターだ。若かりし頃は罪のない人まで殺しているし、背負っているものも多い。彼は社会性に乏しく、人と親密になることを嫌ってきた。スーパーマンのようないわゆる古典的ヒーローではないんだ。今回は、コミックの『オールドマン・ローガン』や年老いた侍の映画、カウボーイ映画などからも着想を得た。一番興味深かったのは、黄昏時のヒーローが、人生の終わりにどういう行動をとるのかという点だった」。

ローガンの前に現れたのは、自分と同じ鋭い爪をもつミュータント・ローラだ。「とてもタフで怒りん坊な男ローガンが、ローラと出会うことで、親にならなければいけなくなるという展開が面白いと思った。ローガンは最初、彼女を極力避けようとするが、結果として受け入れていく。ジョン・ウェインやクリント・イーストウッドの西部劇や、『子連れ狼』などのように、非常に強い男が、とても純真な子どもに出会うことで自分が変わっていくんだ」。

満身創痍となっていくローガンの哀愁漂う姿がなんとも切ない。マンゴールド監督は、現場でヒュー・ジャックマンの全身全霊を懸けたアプローチぶりに心を揺さぶられたそうだ。

「ある日、夜遅くまで撮影している最中に、嵐が来てね。もしかして竜巻が起こるかもしれないから、外へ出てはいけないと言われたので、そのままそこで撮影を続けたんだ。ちょうどローガンが眠りにつこうとするシーンの撮影だったが、その時のヒューは、ローガンの人間性をものすごく深く掘り下げていたよ」。

その寝室でのシーンは、ローガンの苦悩を物語る重要なシーンだった。「私はカメラマンたちと動きについてやりとりをしていたんだが、ヒューには声をかけられない状態だった。彼はその場で留まり、まさに自分の役を生きていて、いわゆるトランス状態に入っていたから。ローガンが抱えるとてつもない悲しみにチャネリングしている感じだった。彼は今回、役柄の深層部にまで到達していたよ」。

本作では、ローガンとチャールズ、そしてローガンと自分の遺伝子を継承したローラという2つの親子関係が描かれている。「今回、家族を描きたいと思った。ローガンはローラに対し、父親として接することに抵抗があるし、チャールズの介護をすることでもいっぱいいっぱいだ。手に負えない状況をWで描きたかったんだ」。

アメコミ映画だが、今回は予定調和なヒーローものではなく、リアリティを追求したかったと言うマンゴールド監督。「今までのキャラクターたちは、まるで神々のように描写されていたが、本作ではローガンたちを人間として扱いたかった」。

そこで監督は、平凡な日常を見せられるよう、ロードムービーにした。「ローガンたちは車にガソリンを補給しないといけないし、トイレへ行ったり、休憩所で買い物をしたりもする。また、ローガンがフェンスを破って逃走しようとするが、フェンスなんて簡単に壊せるものじゃない。それが現実で、私たちが生きている世界に近い。そういう人間味のある映画を作りたいと思った」。

ローガンは少しずつ父性愛に目覚めていく。「私は今作を悲しい映画だと思っていない。ローガンは200年もの間生きてきたが、今回これまで経験したことのなかった感情が芽生えたんだ。そこで彼の人生は初めて満たされたんじゃないかと」。

『X-MEN』シリーズのローガンを締めくくる意味でのラストシーンが深い余韻を残す。「ローガンはずっとチームの一員であることを拒んできた。でも最後に、実は彼がチームのなかで最も高みに上がった1人となった。そのことを示したいと思った」。

深い信頼関係で結ばれた俳優ヒュー・ジャックマンとジェームズ・マンゴールド監督のタッグならではの渾身の1作を、是非スクリーンでご覧いただきたい。【取材・文/山崎伸子】

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