宮崎あおい、青山真治監督の追悼上映『EUREKA ユリイカ』に感慨。映画を観直すには「もうちょっと時間が必要」
第35回東京国際映画祭(TIFF)のNippon Cinema Now監督特集で、今年3月に急逝した青山真治監督の追悼上映『EUREKA ユリイカ』(00)のトークショーが、10月25日に丸の内ピカデリー2で開催。本作に出演した宮崎あおい、斉藤陽一郎が登壇し、青山監督との思い出を語った。
宮崎は『EUREKA ユリイカ』の脚本を読んだ感想を聞かれると「台詞がほとんどなかったし、まだ私は13、14歳だったのであまり覚えてはいなくて」と振り返った。
青山組の常連俳優である斉藤。初めて青山監督作に出演したのは、オリジナルビデオ「教科書にないッ!」(95)だったそうで、『Helpless』(96)の出演は電話で直談判したと言う。「ぜひ出たいですと、無理やりお願いしました。若さゆえの無邪気さで、勝手に電話をしてみました」と苦笑いした。
九州の自然をバックに、突然の悪夢に襲われた人々のその後を、美しいモノクロームの映像で描いた『EUREKA ユリイカ』。第53回カンヌ国際映画祭では、国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞し、宮崎たちもカンヌへ行ったそうだ。
宮崎は「カンヌがどういうものなのか、私は子どもすぎてわからなかったけど、ただただみんなと一緒に海外へ行けるということで、すごく楽しくて。母と洋服を選んだり、普段なら絶対に入らないハイブランドの大人のお店に行って、会場で持つ小さなバッグを両親に買ってもらった記憶がありました」と笑顔で当時を振り返る。
宮崎は「向こうでみんながいいホテルに泊まっていたけど、私と兄が泊まったのはアパートメントでした。それはそれで楽しくて、浜辺でふたりで遊んだりしました。そして、いつかあのリッチなホテルに泊まりたいと思って帰ってきた記憶があります」と当時を懐かしむ。
すると斉藤が「良いホテルに泊まっていたのは監督、プロデューサーとかかな。その時、カンヌはものすごく混雑していてホテルが取れなくて。僕は自費で行きましたが、ニースのホテルしか取れなかったです」とぼやくと、宮崎は「私たち、仲間だったんですね」と2人で笑い合う。
斉藤は「終電があるから、それに間に合うために駅まで走っていたという思い出があります。次はぜひカンヌに泊まりたい」と言って笑いを誘った。
また、『EUREKA ユリイカ』は2017年の第30東京国際映画祭でJapan Now部門の特集企画「銀幕のミューズたち」で上映され、宮崎と斉藤は青山監督とともに舞台挨拶に登壇している。今回、改めて『EUREKA ユリイカ』を観た感想を問われた宮崎は「まだちょっと観れてなくて。観れないというか…観るにはまだもうちょっと時間が必要かなという感じなので」と言葉をつまらせ、涙を浮かべる宮崎。
斉藤は「本来いるべき人がいないという状況で。青山さんがいないことでこのトークが成立してるってことで、久しぶりのあおいちゃんとの再会はうれしかったけど複雑な気持ちです」と胸の内を明かした。
斉藤は久しぶりに本作を鑑賞したそうで「新しい発見がありました。直樹(宮崎将)くんが『海を見に行け。お前の目を通して海を見せてくれ』という台詞がすごく引っかっかって。それは、青山さんからのメッセージのように受け取れました。“海”は映画”にも置き換えられるような気がして。『映画を観に行け』と言われているようで、映画を観続けることで、あちら側とつながる仕組みになっている気がしました」としみじみ語った。
宮崎は、青山監督作の『サッド ヴァケイション』(07)のメイキングを観直したそうで、光石研と斉藤がアドリブをするシーンが大好きだと語った。「台本では『台詞は2人に任せます』とあって。ぶっつけ本番でおふたりがやられてるんですが、三石さんと陽一郎さんも最高だし、監督のおふたりへの信頼感も見えるし、監督がおふたりを見てにやにやしたうれしそうな顔もあって、すべてが本当にすてき。監督のキュートなところもおふたりのすごいところも見られると思います」と言って、最後は笑顔を見せた。
第35回東京国際映画祭は、10月24日~11月2日(水)の10日間にわたり、シネスイッチ銀座、丸の内TOEI、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷ほかで開催中。
取材・文/山崎伸子
※宮崎あおいの崎は「立つさき」です