「ウルトラセブン」満田かずほ監督が明かす、企画書に書かれた「ダンとアンヌのロマンス」
第35回東京国際映画祭で「ウルトラセブン」55周年記念上映『対話』として、「ダーク・ゾーン」「宇宙囚人303」「盗まれたウルトラ・アイ」「ノンマルトの使者」の4作が上映。その後、「ウルトラセブン」のメイン監督である満田かずほと、批評家の切通理作を招いたトークショーが開催され、ダンとアンヌのロマンスについての制作秘話が明かされた。
「ウルトラセブン」が55周年を迎えたいまの心境を聞かれた満田監督は「1967年に撮影を始めたんですが、僕は始まってから30歳になりました。それから55年ですね」としみじみ語ると、切通も「半世紀って言葉がありますが、55年は未来ですよね。未来の姿を描いたウルトラセブンを、満田監督と一緒に大スクリーンで観られて感無量です」と喜びを口にした。
今回の4本を改めて観た感想について、切通は「ダンとアンヌの関係性が最初のクールと最後のほうのクールでは距離感が全然違います。最初ははつらつ青春コンビだったのが、『ノンマルトの使者』になると、恋人のようになっています」と熱く語る。
「宇宙囚人303」と「盗まれたウルトラ・アイ」は鈴木俊継監督が、「ダーク・ゾーン」と「ノンマルトの使者」は満田監督が手掛けているが、その演出について「鈴木監督はオーソドックスですが、満田監督はアップが多かったり、静止画を挟んだりしてみずみずしく、青春って感じがしました」と感想を述べた。
満田監督は「僕が最終回を撮ることは決定していたので、できるだけそれまでにダンとアンヌの距離を縮めておきたいという想いがありました」とうなずいた。ダンとアンヌの関係を縦軸に描いた点については、「企画書のなかに『ダンとアンヌの甘いラブロマンス』とあったんです。でも、それを守ったのは、脚本の金城哲夫と私だけです」と言って会場の笑いを誘った。
「ウルトラセブン」で描かれた淡い恋について切通は「背伸びをさせられたというか、今日上映された4本のうち3本は、セブンが出てくるシーンがものすごく少ないんです。子どもからしたら、もっと怪獣と戦うウルトラセブンが見たいと思うかもしれないけど、きっと当時観ていた人はそういう情操というか感覚を、この番組で育てられたんじゃないかという気さえします」とコメント。
また、「対話」というテーマについて切通は「違うものが会話をしていて、ズレみたいなものを視聴者が感じてくる。ダンが、『ダーク・ゾーン』では無邪気で初期ならではの若々しさがありましたが、『ノンマルトの使者』は最終回に向かうほうなので、モノローグが板についてきたし、自分が地球人じゃないという視点もわかってきます。『盗まれたウルトラ・アイ』では、『僕だって同じ宇宙人じゃないか』という台詞が最後の最後に出てきて、そこも上手いなと。僕は幼稚園のころに観ましたが、いまでも心に残っている台詞があります」と感心しきりだった。
満田監督も「55年前はあまり意識しないでいたけど、今回テーマが『対話』だと聞いて考え直してみたんです。言ってみれば、地球人と宇宙人との対話、ここに大きくしぼられたんじゃないかなと思います」と力強く語った。
第35回東京国際映画祭は、10月24日~11月2日(水)の10日間にわたり、シネスイッチ銀座、丸の内TOEI、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズシャンテ、TOHOシネマズ日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷ほかで開催中。
取材・文/山崎伸子