『さがす』は「佐藤二朗という怪優をコントロールしきった」作品!片山慎三監督は「死ぬまで撮り続けたい」と宣言

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『さがす』は「佐藤二朗という怪優をコントロールしきった」作品!片山慎三監督は「死ぬまで撮り続けたい」と宣言

第35回東京国際映画祭が開催中の角川シネマ有楽町で11月1日、日本映画監督協会新人賞と提携したシンポジウムが行われ、第62回日本映画監督協会新人賞を受賞した『さがす』の片山慎三監督と、日本映画監督協会理事長を務める本木克英監督、選考委員の高橋伴明監督が登壇した。

【写真を見る】トロフィーを受け取った片山慎三監督
【写真を見る】トロフィーを受け取った片山慎三監督

初監督作『岬の兄妹』(19)で注目を浴びた片山の長編2作目で、商業映画デビュー作となる本作。指名手配犯を見かけた翌朝に姿を消した父の原田智(佐藤二朗)を主人公に、中学生の娘の楓(伊東蒼)が孤独と不安を押し殺しながら父を探していくうちに、連続殺人犯と出会う姿を映しだす。

賞について写真を見せながら説明
賞について写真を見せながら説明

本木監督は、同賞について「新人賞を設置したのは、1960年。第1回に受賞したのは大島渚監督の『青春残酷物語』。賞を渡したのが小津安二郎監督です」と当時の写真を見せながら、「映画監督が選んで、才能ある新人映画監督に与える賞。唯一無二の価値がある」と説明。トロフィーを受け取った片山監督は、「62回も続く新人監督賞をいただけて、本当に光栄です。これからも死ぬまで撮り続けていけたらと思っています」と力強く宣言した。また「『岬の兄妹』の時に、自分としては『選ばれるのかな』とほのかに思っていた。ちょっと期待していた自分がいた。残念な思いをした」と照れ笑いしながら、「『さがす』でこの賞をいただけてうれしいです」と喜びをかみ締めていた。


高橋伴明監督と握手!
高橋伴明監督と握手!

高橋監督は、選考理由について「新人らしからぬ、ベテラン監督が入ってきたみたいだった」とにっこり。「隙があっても、強引にそれを突き抜けていくような強さがあった。総合的に、今年は片山さんで文句はないと決まりました」と絶賛した。さらに「佐藤二朗という怪優を、ここまでコントロールしきった力量にまず驚きました。自分でも、ちょっとコントロールできないような役者だと思っていたので、そこが見事だと思いました」と語った。

『さがす』の片山慎三監督
『さがす』の片山慎三監督

うれしそうな笑顔を見せた片山監督は、佐藤本人に対して「最初に『いままでと違う佐藤二朗さんを見せたい』とお話しした」と熱意を述べたという。「本人にも『わかった』と言っていただいて。覚悟を持って現場に挑んでもらったんですが、何度もテイクを重ねると、本人的にも苦しんでいたみたいです。撮影が終わった後も、夜中まで一人で飲んだりしながら発散していたみたいです」と目尻を下げながら、「僕もそんなに言葉でうまく誘導ができないので、とにかく何度もやっていただいた」と感謝していた。

東京国際映画祭で『さがす』が上映された
東京国際映画祭で『さがす』が上映された

本木監督は「人間の奥底にある弱い面、暗い面、残忍な面をえぐられるように描いている。悪趣味に走らず、見事なエンタテインメントにしている。ユーモアも感じられる。すごみのある作品」と本作を称え、「リアルに起きた事件を想起しながら観た。これに向き合おうと思われた理由を聞きたい」とシビアな内容に取り組んだ理由が気になっていると話す。SNSのなかにもう一つの人格がいるような現代社会の側面に「不思議な感覚があった」という片山監督は、「ツイッターなどで殺人を依頼して、事件が起きたりもしている。そういった事件に興味を持った」とコメント。「脚本を書くうえでは、座間の事件の犯人にも会いに行って話を聞いて、彼の言葉をセリフにもした。いまの世界が抱える闇を描きたかった」と明かしていた。

取材・文/成田おり枝

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