『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が北米の劇場に登場!『ブラックパンサー』続編が5週連続V
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(日本公開中)の公開を前にした先週末(12月9日から11日)の北米興収ランキングは、トータルの興行収入が3758万ドルと今年2番目に低い、近年でも稀に見るほど極端な“嵐の前の静けさ”。『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(日本公開中)が5週連続Vを達成し、累計興収4億ドルの大台を突破。火曜日の段階で2022年公開作の第2位に浮上した。
上位の作品の順位にほとんど変動が見られなかった穏やかなランキングで注目すべきトピックは2つ。まずは通常の映画配給から旧作のリバイバル、イベント上映やライブビューイング上映など多岐にわたるコンテンツを扱う「Fathom Events」の存在感だ。前週に公開された伝記映画『I Heard the Bells』も同社の配給作品だが、それに加えてベストテン圏内にもう1作品、『MET ライブビューイング ケヴィン・プッツ《めぐりあう時間たち》』(2023年2月3日日本公開)が8位にランクインを果たした。
オペラの演目を複数台のカメラで収録し、映画館で期間限定上映するこの「METライブビューイング」は、日本でも人気の高いODSコンテンツの一つ。今回の作品はジュリアン・ムーアとメリル・ストリープ、ニコール・キッドマンが共演した『めぐりあう時間たち』(02)のオペラ版であり、12月10日の夜に行われた初演が826スクリーンでライブ配信。1回限りの上映機会でありながら、MET作品としては珍しくランクインするほど大盛況となったようだ。
また16位には『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21)がランクイン。北米では昨年夏に配信公開されているが、今回はFathom Events提供で3日間限定の上映イベントが敢行。726館で32万ドルという興収は最終日だけの成績であり、3日間の合計興収は79万ドル。つまり今回のランキングの8位に相当する数字を叩き出したことになる。
同社は2023年1月にも『シン・ウルトラマン』(22)の2日間限定上映を控えているとのことで、映画上映の仕組みが多様化する昨今、Fathom Eventsの動向には注目しておきたい。
もう一つのトピックは、第95回アカデミー賞の前哨戦が本格的にスタートしたなか、特に注目のスタジオの新作タイトルが2本公開されたことだ。ダーレン・アロノフスキー監督とブレンダン・フレイザーがタッグを組んだA24作品『The Whale』は、6館での限定上映ながら3日間で興収36万ドルを記録し14位にランクイン。フレイザーの主演男優賞レース参戦が大いに期待されているなかで、1館あたりのアベレージが2022年公開作No. 1のパフォーマンスを見せつけた。
一方、サーチライト・ピクチャーズの新作となるサム・メンデス監督の『エンパイア・オブ・ライト』(2023年2月23日日本公開)は、110館で興収16万3405ドルと少々物足りない出足に。批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は45%と伸び悩み気味。今年のサーチライトの勝負作は、ゴールデン・グローブ賞で最多ノミネートを獲得した『イニシェリン島の精霊』(2023年1月27日日本公開)で決まりだろう。
文/久保田 和馬