『フェイブルマンズ』でキーマンを演じたセス・ローゲン、スピルバーグからの熱烈オファーに仰天!
巨匠スティーヴン・スピルバーグが、映画監督になる夢を叶えた自身の原体験を描く最新監督作『フェイブルマンズ』(3月3日公開)。本作で主人公サミー(ガブリエル・ラベル)の父バート(ポール・ダノ)の親友かつ同僚のベニー・ローウィ役を演じたのが、俳優業のほかコメディアン、プロデューサー、脚本家、映画監督などマルチな才能で知られるセス・ローゲンだ。スピルバーグ監督からの熱烈なオファーを受けて本作に参加したセス・ローゲンの魅力に迫る。
スティーヴ・カレル主演の『40歳の童貞男』(05)や、出演のみならず製作総指揮・脚本も務めた『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(07)、ミシェル・ゴンドリー監督作『グリーン・ホーネット』(11)などに携わり、高い演技力で評価を得たローゲン。近年ではロマンティックコメディ『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』(19)や『ライオンキング』(19)に出演するほか、公開待機作に『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(4月28日公開)などが控えている。
『フェイブルマンズ』は、初めて映画館を訪れて以来、映画に夢中になった少年が、両親との葛藤や絆、様々な人々との出会いによって成長していきながら、夢を追い求めていく物語。サミーが子どものころ、フェイブルマン家に居候していたローゲン扮するベニーは、バートと共にゼネラル・エレクトリック社で働くために、フェイブルマン一家と一緒にアリゾナへ移住する。そのおおらかで生き生きとした明るい性格は、子どもたちに慕われ、親しみを込めて“ベニーおじさん”と呼ばれているほどだ。
フェイブルマン一家との深い関わりのなかで物語を動かしていくキーマンを演じているローゲンだが、本作のオファーには大変驚いたようで「スティーヴン・スピルバーグが私と話したがっていると聞いたとき、まるでハリウッドの校長室から呼び出しをくらったような気がして、なにかやらかしたのかと思いました。彼は自分の人生をベースにした脚本を書いていて、そのなかのベニーおじさんというキャラクターが、私に似ていると言うんです。脚本を読んでみて、とても気に入りました。スティーヴンからオファーがくるなんてビックリしました」と冗談を交えながら、誰もが知る監督からの思ってもみない出演依頼に喜びを露わにしたという。
また、スピルバーグ監督はローゲンのなかに、琴線に触れるなにかを感じていたようで「セスはコメディで成功しているが、人間ドラマを演じることもできる俳優です。彼が私のなかの第一候補で、ほかに候補はいませんでした。もしセスに断られていたら、途方に暮れていました。私が長きにわたってよく知っていて大好きだった人物に、彼は本当によく似ていたから」と、彼の俳優としての確かな実力を称えつつ、自身の原体験を映像化する上で欠かせない人物であったことを振り返った。
そんなスピルバーグをも虜にしていたローゲンだが、撮影中に最も印象に残っているのは、スピルバーグ自身が8㎜カメラを操作し、サミーのホームムービー用の短い素材を撮影していたことだという。特にフェイブルマン一家のキャンプ旅行を撮影するなかで、サミーが偶然にも後の人生を覆す重大発見をした時のこと。
「彼がまるで小さなタイムマシーンを抱えているように見えたことがありました。レンズを通して見る光景が、文字どおり、彼をあの時代へ連れ戻していたんです。監督が自身の実際の人生のあのような美しさと哀しみの瞬間を捉えようとするのを目の前で見たことは、とても特別な感じがしました」と、巨匠の人生のターニングポイントを一緒になぞるような貴重な体験をしたことを回顧する。
きたる第95回アカデミー賞に向け、世界中からますます注目を浴びている本作。ぜひ、物語の重要人物を演じるローゲンの演技にも注目していただきたい。
文/山崎伸子