黒澤明の名作をカズオ・イシグロが脚色!アカデミー賞でも注目の『生きる LIVING』とは

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黒澤明の名作をカズオ・イシグロが脚色!アカデミー賞でも注目の『生きる LIVING』とは

日本映画界を代表する巨匠、黒澤明監督の代表作の一つ『生きる』(52)。その色褪せることのない強烈なメッセージ性に影響されて生きてきたと語るノーベル賞作家カズオ・イシグロが、自ら脚本を執筆して同作を現代によみがえらせた『生きる LIVING』が、3月31日(金)よりついに日本公開を迎える。本稿では、『生きる LIVING』の必見ポイントを簡単に紹介していこう。

余命を知ることで、ある男の人生が輝き始める

舞台は1953年、第二次世界大戦からの復興途上にあるロンドン。役所の市民課に勤めるお堅い公務員のウィリアムズは、家では孤独を感じ、職場では部下に煙たがられながら事務処理に追われる日々を送り、人生を空虚で無意味なものだと感じていた。そんなある日、彼は医者から癌であることを宣告され、余命半年であることを知る。

変わらない日常を淡々と生きていた男に、大きな変化が訪れる
変わらない日常を淡々と生きていた男に、大きな変化が訪れる[c]Number 9 Films Living Limited

自分の人生を見つめ直し始めるウィリアムズは、手遅れになる前に充実した人生を手に入れようとしていく。仕事を放棄して海辺のリゾートで酒を飲みバカ騒ぎをしてみたり、かつての部下であるマーガレットに惹かれささやかな時間を過ごしたり。そして彼は、まるで啓示を受けたかのように新しい一歩を踏み出すことを決意。やがてそれは、無関心だった周囲の人々をも変えていくことに。

『Beauty』で第64回カンヌ国際映画祭のクィア・パルムを受賞したオリヴァー・ハーマナス監督がメガホンをとった本作は、昨年のサンダンス映画祭を皮切りに、ヴェネチア国際映画祭やサン・セバスティアン国際映画祭、トロント国際映画祭など世界各地の映画祭で上映され大絶賛を獲得。さらに第35回東京国際映画祭ではクロージング作品として上映された。

オスカー候補にも!ビル・ナイの名演に涙する

【写真を見る】「パイレーツ・オブ・カリビアン」の名優が人生を見つめ直す主人公に!
【写真を見る】「パイレーツ・オブ・カリビアン」の名優が人生を見つめ直す主人公に![c]Number 9 Films Living Limited

オリジナルでは志村喬が演じた主人公を演じたのは、『ラブ・アクチュアリー』(03)では落ちぶれたロックスターを、「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズでは幽霊船の船長デイヴィ・ジョーンズ役を演じるなど、多彩な演技力で映画ファンから絶大な信頼を寄せられているイギリスの名優ビル・ナイ。

円熟味にあふれた本作での演技は高く評価され、第78回ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ドラマ部門)、第76回英国アカデミー賞主演男優賞にノミネートされるなど、多くの映画賞で受賞・ノミネートを果たす。そして第95回アカデミー賞では主演男優賞にもノミネート。ナイは映画デビューから約40年のキャリアで初めてオスカー候補に名乗りを挙げた。

ビル・ナイは、40年のキャリアで初のオスカー候補に
ビル・ナイは、40年のキャリアで初のオスカー候補に[c]Number 9 Films Living Limited


またアカデミー賞では、カズオ・イシグロが脚色賞にもノミネートされている。現地時間3月12日(日)に行われる授賞式にも注目が集まるところだ。

さらに「日本映画専門チャンネル」と「日本映画+時代劇4K」では、本作の公開を記念してオリジナルの『生きる』<4Kデジタルリマスター版>が3月26日(日)にテレビ初放送。4月にも放送予定があるので、『生きる LIVING』を観る前でも観た後でも、家族の断絶や官僚主義への批判を織り交ぜながら“生と死”という普遍的なテーマを表現した不朽の名作を、高精細な映像で味わってみてはいかがだろうか。

『生きる LIVING』は3月31日(金)公開
『生きる LIVING』は3月31日(金)公開[c]Number 9 Films Living Limited

鬱屈とした時代に生きるすべての人々の心に光を灯す、黒澤明とカズオ・イシグロの時代も国境も超えた奇跡のコラボレーション。装いも新たによみがえった『生きる LIVING』の感動を、是非とも映画館のスクリーンで味わってほしい。

文/久保田 和馬


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