『わたしの幸せな結婚』で映画単独初主演の目黒蓮にインタビュー。蜷川実花による美麗な撮り下ろしカットと共にお届け
結婚とは、生い立ちも境遇も違う2人が共に生きていくと誓うこと。孤独な2つの魂が寄り添い、温もりを分かち合う。人々が結婚に憧れを抱くのは、そんな奇跡を信じてみたいと思うからかもしれない。映画『わたしの幸せな結婚』(公開中)もまた、「異能」という特殊能力を扱った和風ファンタジーでありながら、人と人が心を通わせ結びついていく尊さに心洗われる純真無垢なラブストーリーとなっている。
政略結婚で出会った2人、冷酷無慈悲と噂される軍隊長・久堂清霞と、継母と異母妹に虐げられ、愛を知らない生活を送ってきた斎森美世が、徐々に絆を深めていく本作。久堂清霞を演じるのは、本作が映画単独初主演となるSnow Manの目黒蓮。「僕にとってすごく大きな作品になりました」と胸を張る本作への想いを、現在発売中の「シアターカルチャーマガジンT.(ティー)」48号に掲載中の、蜷川実花による美麗な撮り下ろしカットとともにお届けする。
「塚原さんから学んだことが、いまのお芝居の土台になっている」
「原作を読んだ時に、マジでおもしろいなと思ったんですよ」。いつも穏やかな目黒蓮が、そう少し興奮気味に語りはじめる。「まずタイトルがいいですよね。『わたしの幸せな結婚』と聞いたら、どういうお話だろうって、みんななんとなく思い浮かべるイメージがあるじゃないですか。それをいい意味で裏切っていく。自分の思い描いていたイメージのさらに上を行くような感覚が初めて原作を読んだ時にありました」。
特に心を掴まれたというのが、映画本編でも描かれている清霞と美世の出会いのシーンだ。久堂家に嫁いできた美世を、清霞は冷たく突き放す。「このシーンだけで、清霞がどういう人なのか一発でわかる。そこがおもしろいなと思いました。僕だったら、せっかくお嫁さんに来てくれた人にあんな態度は絶対とれない(笑)。だからこそ、清霞という人物に興味を持ったというか。もっとこの先を読みたいなって思いました」。自分とはまったく違う久堂清霞という男の気持ちを探っていくところから、目黒の役づくりは始まった。
「ファンタジーであっても等身大の日常劇でも、役へのアプローチとしては、自分の中ではあまり変わらないです。演じる時はいつも気持ち優先。とにかく原作を何度も読んで、清霞の気持ちをとことん考える。原作から感じ取った清霞の良さを、僕を通して少しでも表現できればという気持ちで演じていました」。
監督は、「アンナチュラル」「MIU404」「最愛」などで知られる塚原あゆ子。塚原との出会いは、目黒のキャリアにおいても重要なものとなった。「塚原さんはすごくわかりやすい言葉で導いてくださるんですよ。塚原さんと話していくなかで、自分の目指したいお芝居の方向性が定まったようなところがあった。いまでも塚原さんから教えてもらったことが、自分のお芝居の土台になっているというか。目線とか表情とか、そういう細かいテクニックから、お芝居に向き合う姿勢まで、塚原さんから学んだことはすごく大きくて。時期的にはこのあとに『silent』や『舞いあがれ!』になるんですけど、この作品がなかったらいまの自分のお芝居の形はなかったなと思えるぐらい、自分にとって大きな作品になりました」。
クライマックスには、壮大なアクションシーンも待っている。「『わたしの幸せな結婚』のアクションは、いままでやってきたものとはまた違って、すごくリアルなんです。綺麗に型通りやるのではなく、あえて型を崩したような手もあって。現場でも、型をつけるのは撮影の直前。教えてもらった流れをその場で覚えて、すぐにやる。その型にはまっていない感じが、リアルに見える理由なのかなと」。
「ワープができるようになって、もっと家でワンちゃんと遊びたい(笑)」
話題作への出演が相次ぎ、目黒への俳優としての評価は高まる一方だ。そんななか、公開される初の単独主演映画。目黒にとっては勝負となる1本だ。「プレッシャーをまったく感じていないと言うと嘘になる。でも、あまりそこを考えすぎても仕方ないとも思っているんですよ。結局、僕がやれることは、その都度その都度いただいたお仕事を一生懸命やるだけ。そういう意味では、どの作品もその時の自分がやれる精一杯が形になっていると思います」。
目黒は、決して大言壮語を吐くタイプではない。むしろ極めて控えめで、自分のことになると謙虚な言葉ばかりが出てくる。そんな目黒が、この作品について語る時だけは何度も「観てほしい」と熱っぽく繰り返した。文字通りの自信作が、いま世に放たれる。「僕の持てるすべてをこの作品にぶつけることができた。ラブストーリーではあるけど、世界観は壮大で、アクションもあって、女性だけではなく男性にも観てほしい作品です」。
最後に、異能にちなんで「こんな特殊能力があればいいなと思うものは?」と尋ねると、照れ臭そうに目元を綻ばせ、こう答えた。「ワープとかできたらいいなと。瞬間移動ができたら、空いた移動時間を別のことに使えるじゃないですか。僕だったらそうですね。そのぶん、家でワンちゃんと遊びたいですね(笑)」。
時代の先頭を走るスターでありながら、その素顔は素朴で温和。周囲を緊張させるような威圧感はどこにもなくて、ふっとその場の空気に溶け込み、まるで植物のように静かに微笑んでいる。こうした飾らなさが、令和のスターの条件なのかもしれない。目黒蓮、26歳。心優しきカリスマが、いま、時代を熱狂させている。
取材・文/横川良明
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表紙+巻頭インタビューに目黒蓮が登場。蜷川実花が撮り下ろす「わた婚」の世界観に浸る!