コリン・ファレルが語る、マーティン・マクドナー監督の手腕と『イニシェリン島の精霊』の秀でた魅力

インタビュー

コリン・ファレルが語る、マーティン・マクドナー監督の手腕と『イニシェリン島の精霊』の秀でた魅力

「景色は常に美しく、まるでギリシャにいるようでした」

撮影は、アイルランドのイニシュモア島で3週間かけて行われたという。先述のとおりファレルはアイルランドの逆側に位置するダブリン出身だが、撮影時にはロサンゼルスに移住して早16年が経っていた。それでも「私の心のなかにはいつだって故郷があります。私が20歳になるまで暮らし、私という人間を形成した、大好きな場所だから。その後、私はロサンゼルスに移住したけれど、どちらもそれぞれ違った形で大好きです」。

【写真を見る】「まるでギリシャのよう」とコリン・ファレルも絶賛するロケ地、イニシュモア島
【写真を見る】「まるでギリシャのよう」とコリン・ファレルも絶賛するロケ地、イニシュモア島[c]2023 20th Century Studios.

ファレルはほかのキャストやクルーたちを伴い、フェリーでイニシュモア島に上陸。「とても興奮しました。イニシュモアの人々はとても寛大できらめいていました。先史時代に作られた要塞、ドン・エンガスは何千年もの間ずっとこの地平線から天に伸びていくようにたたずんでいたんです。撮影期間中は、異例なほどすばらしい天候に恵まれ、景色は常に美しく、まるでギリシャにいるようでした」。

コルムはこれからの人生を作曲に専念したいというが…
コルムはこれからの人生を作曲に専念したいというが…[c]2023 20th Century Studios.

映画のタイトルは、劇中でコルムが作曲する曲のタイトルでもあり、原題『banshees』(バンシー=精霊)は、アイルランド神話でよく知られる、死を予言して歌う幽霊のこと。「物語が展開すると同時に、コルムの弾くフィドル(ヴァイオリン)を通して、この音楽が映画とより関連づけられていきます。イニシェリンに精霊はいないのですが、コルムは『いるかもいれない』と言うでしょう。ですが、精霊が人を奈落の底に突き落とすとは思っていません。ただ座って観察するだけです」。そして、「もしその歌声を聞いてしまったら…もう手遅れです」と恐ろしい一言も。

物語はクライマックスで急展開し、驚愕の結末へと向かう。「パードリックはあまりに傷ついたことで、本来であればしなかったであろう行動に出ます。コルムはなんらかの理由から興奮し、傷つき、悲しみ、怒り、怯えを経験し、その結果、卑劣な行動を起こします。痛みは痛みを生む。怒りは怒りを生む。暴力は暴力を生む。人類は多くの愚かな行いをします」と悲痛な想いを口にするファレル。


『イニシェリン島の精霊』デジタル配信中(購入/レンタル)&ブルーレイ+DVDセット発売中
『イニシェリン島の精霊』デジタル配信中(購入/レンタル)&ブルーレイ+DVDセット発売中[c]2023 20th Century Studios.

だが、「マクドナーが作るものはおもしろおかしく、アナーキーな要素を持っていますが、彼の作品は感動的で親しみやすいので、人々に受け入れられるでしょう。私たちはただ島の人々の物語を伝えているのではありません。忠誠心、別れ、孤独、悲しみ、死、嘆き、暴力の追求、これらは直接的にも、間接的にも、だれもが経験し、心動かされたことのある非常に人間的な感情です」とも語った。親友から絶縁を突きつけられた男と、突きつけた男。ファレル、グリーソン、マクドナー監督が満を持して再タッグを組み、本作を通して観客に投げかける問いとは。

なお、ブルーレイ+DVDセット、デジタル配信(購入)には貴重なインタビュー映像やメイキング映像、未公開シーンなども収録されているので、あわせてチェックしてみてほしい。

文/山崎伸子

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