高橋一生、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は「集大成」。シリーズに込めた熱き想い告白!
俳優の高橋一生が5月27日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された主演映画『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の公開記念舞台挨拶に飯豊まりえ、木村文乃(リモート登壇)、長尾謙杜、美波、渡辺一貴監督と共に出席。本シリーズに込めた想いを熱く語った。
本作は、荒木飛呂彦の大人気コミック「ジョジョの奇妙な冒険」から生まれたスピンオフ「岸辺露伴は動かない」を、高橋主演で実写ドラマ化した制作チームが再集結して挑んだ劇場長編映画。フランスのルーヴル美術館を舞台に展開される、荒木初となるフルカラーの読切で描かれたエピソードを原作に、露伴が“この世で最も黒く、邪悪な絵”の謎を追う。
上映後の舞台挨拶に立ち、「どうでしたか?」と呼びかけて大きな拍手を浴びた高橋。「今日は9万2千人の方がご応募してくださったようです。皆さんがこの作品を熱く支えてくださる一員なんだと、心からうれしく思っています」と笑顔を見せた。
またリモート登壇した、青年期の露伴(長尾)が出会う謎めいた女性、奈々瀬役の木村は「私は長尾さんとのシーンが多かった」と撮影を述懐し、「長尾さんは今回大人になった露伴さんも意識しながら、絵のことも意識しながら、やらなきゃいけないことがたくさんあったと思う。監督と綿密なコミュニケーションを取りながら、『きっと露伴さんは若い時にこうだったんだろうな』という立ち居振る舞いをされていた。すばらしかった」と長尾の演技を大絶賛。
「本当にうれしく思います」と照れ笑いを見せた長尾は、「すべて日本での撮影でした。歴史あるすてきな旅館で撮影させていただだいた。本当に原作のなかに入ったような旅館。その世界観に入り込んで撮影させていただけたので、すごく楽しかったです」と充実感もたっぷり。木村と初めて芝居を交わした際には、「漫画で見ていた奈々瀬さんだった」と原作の役柄そのものだと感じたそうで、「ミステリアスで、触っちゃうと消えてしまいそうだった」と語っていた。
またこの日は、映画の内容にちなみ「自身の黒いなと感じる」エピソードについて明かすひと幕も。高橋は「ある時に突然、美波ちゃんから『一生さんって本当に黒いですよね』と言われた。『井戸の底のようだ』と。『自覚しております』と言っておきました」と現場での出来事を回顧。その意図について美波は、「目のなかが井戸の底のようだったから。いい意味です」と大笑い。「落ちたら怖い感じ。底なしの黒」と高橋の目が真っ黒だという。高橋は「別の現場でも、ある女優さんに『目の奥が真っ黒だ』と言われた。そうなんでしょうね。“黒、一生”だと思っていただけたら」と楽しそうに自覚していた。
露伴の担当編集、泉京香役の飯豊飯豊は「泉京香を演じさせている身としては、黒い部分ってあまりよくない。『黒ってなんですか』と答えておきます」とお茶目な笑顔をのぞかせた。木村は「長尾さんが絵も描いたり、監督のリクエストに応えたりと大変ななか、暗くて涼しい部屋から、皆さんが奮闘している姿を冷ややかに眺めている役だった。違う世界にいる感じに浸っている自分が、ちょっと黒いなと思いました」と明かし、これには長尾も「『そうだったんだ』とびっくりしています」と笑顔。その長尾は「生まれが関西なんですが、すごく値段を気にしてしまう。『次のお店はもうちょい安いんじゃないか』と考えて、買えない時がある。そういう時はケチで黒いのかなと思います」と告白し、周囲を笑わせていた。
撮影を懐かしそうに振り返っていた高橋は、最後に「この作品は娯楽です。娯楽作品は人の心を動かし得るもの」と切りだし、「少しずつ現実の世界ってつらくて、悲しく、寂しいものになっている気がします。ちょうどその世界が始まるくらいのころに、僕は岸辺露伴の役をいただきました。せっかくこの役をいただけたならばはっきりとしたこの虚構の世界で、皆さんに夢の世界を見ていただいて、現実を生きる力を携えていただきたいと思ってやってまいりました。この作品にはその集大成が詰まっていると思います」と本シリーズに込めた想いを吐露しながら、完成作に胸を張った。
さらに「俳優はもちろん、作品も忘れ去られていくスピードがどんどん速まっていると思う。露伴の名前の文字になぞらえると、“露”というのは、“儚いもの”という意味らしいです。僕は俳優として、この儚いものと共に過ごしていきたいと思っています」と俳優としての決意を語り、「皆さんもこの儚いものと共に過ごしていただけたら。この作品を長く大事にしていただけたらと思っています」と願いを込め、大きな拍手を浴びていた。
取材・文/成田おり枝