ゲームの枠組みを超えた圧倒的“リアルさ”!「グランツーリスモ」シリーズはなにがすごい?
10代のゲームプレイヤーがプロドライバーを目指すという感動の実話をハリウッドで映画化した『グランツーリスモ』(9月公開)。映画の公開を前に、本作で主人公のヤンがドライバーになるきっかけとなったゲームシリーズで、世界的な人気を誇るリアルドライビングシュミレーターの金字塔「グランツーリスモ」の魅力をひも解く。
1997年にPlayStation用ソフトとして誕生し、今年で25周年を迎える「グランツーリスモ」シリーズ。生みの親である山内一典が全シリーズのプロデューサーを務め、自身が代表を務めるポリフォニー・デジタルが開発を行っている。今年3月にはシリーズの集大成である最新作「グランツーリスモ7」が発売され、全世界でシリーズ累計9000万本を売り上げる大ヒット作となった。
ゲーム業界でも、数多く存在するレースゲームの頂点に立つ作品として、日本だけにとどまらず世界各国で人気を博す「グランツーリスモ」シリーズ。作品の魅力は、なんといっても実写と見紛うほどに細部まで作り込まれた美しいグラフィックや、リアルなエンジンサウンド、忠実に再現されたクルマの挙動などの圧倒的なクオリティで、世界中のレースゲームファンから支持され続けている。
1997年12月に発売した初代「グランツーリスモ」では、それまで数少なかった実在する車両を収録した点や、独自に開発された物理エンジンによって実現したリアルなクルマの挙動で当時のユーザーたちに衝撃を与え、初代PlayStationのゲームソフトで最大のヒットを記録。その没入感から“リアル系”と呼ばれるカテゴリーを確立するなど、レースゲームの界隈にも革命を巻き起こした。
その後も同シリーズのグラフィックは、シリーズを重ねるごとにさらなる進化を遂げてきた。最新作の「グランツーリスモ7」では、忠実に再現された全世界のサーキットでレースモードを楽しめるほか、自分好みのクルマを買ってチューン(カスタマイズ)しロケーションを考えて写真を撮影するモードや、ユーズドカー(中古車)を買って改造していきコレクションをするなど、クルマ好きが一度は夢に見たカーライフをゲーム上で再現できる。「グランツーリスモ」は、いまやレースゲームの枠組みを超えた“リアルドライビングシミュレーター”となったのだ。
この「グランツーリスモ」をシミュレーターとして取り入れた、本物のプロレーサーを育成するプログラム「GTアカデミー」からは、実際にゲームプレイヤーからプロレーサーへ転身し、映画『グランツーリスモ』のモデルとなったヤン・マーデンボロー選手をはじめ、ウォルフガング・ライプ選手、フローリアン・ストラウス選手など、数多のドライバーが輩出されてきた。また、プロレーサーたちが行う日常のトレーニングにも活用されるなど、リアルレースとバーチャルレースの垣根は非常に低くなり、両者の融合が進んだことでモータースポーツの形式も発展し続けている。
また、eスポーツの種目としても数多くの大会が開催されており、今年記念すべき第1回となる「オリンピックeスポーツシリーズ2023」で競技タイトルの一つとなったことで、さらなる注目を集めている。
そのほかにも、昨今ではeスポーツレーサーとしてグランツーリスモ世界大会優勝からプロレーサーに転身し、現役で数々のレースで活躍する冨林勇佑選手など、ゲームを通じてプロのレーサーとなったドライバーが少しずつ増えてきた。そんないまだからこそ、その先駆者であるマーデンボローの実話をもとに、過酷な夢をつかむべく激走する時速320キロの衝撃を圧倒的なスケールで描く本作を、ぜひ劇場にて体感してほしい。
文/山崎伸子