YouTubeからアカデミー賞へ!“おしゃべりな小さな貝”マルセルはこうして生まれた

インタビュー

YouTubeからアカデミー賞へ!“おしゃべりな小さな貝”マルセルはこうして生まれた

「マルセルをまだ知らない人たちに、この作品を観てもらうことを望んでいる」

ディーンとの出会いで人間の世界を初めて知ったマルセル
ディーンとの出会いで人間の世界を初めて知ったマルセル[c]2021 Marcel the Movie LLC. All rights reserved.

「マルセルは心優しくて自信に満ちていて、ひたむきで真面目だけど深刻に考えすぎることはない。生まれつき人を楽しませることが得意だけど、だからと言って自分勝手になることはない。音楽を愛し、知らない人に出会うのが好きで、少しウワサ話をすることもあるかもしれないけど、基本的にはいい子なんです。そんなマルセルと家族は、思いがけない出来事が立て続けに起きたせいで離れ離れになってしまう」。マルセルの魅力を語るスレイトは、長編となった本作に込めたテーマについて触れる。

「私たちがマルセルに出会った時、あの子は自分が行動することで状況を変えられるなんて考えてもいなかった。この映画の大部分は、喪失感を抱えながら生きる姿、そしてそれを乗り越えていく姿が描かれています。希望を持つとはどういうことなのか、希望を抱くとはどれくらい苦しいことなのか。人は弱っている時、なにかを望むという選択肢を持つことすら難しいのです」。


ディーン・フライシャー・キャンプ監督は映像作家のディーンとして自ら出演
ディーン・フライシャー・キャンプ監督は映像作家のディーンとして自ら出演[c]2021 Marcel the Movie LLC. All rights reserved.

それを受けてキャンプ監督は「僕がもっとも望んでいることは、マルセルをまだ知らない人たちにこの作品を観てもらうことです。この作品がみんなを照らし、喜びや希望をもたらしてくれることを願っています」と語る。「初めてマルセルを上映した時を思い返して、ふと気が付きました。現代に生きる我々に向けて、マルセルが本質的な真実を気付かせてくれる。僕たちを支える枝が折れたとしても、その部分が修復されて強くなり、成長していく。そして結局、成長こそが生きているということの唯一の証なのでしょう」。

その言葉通り、キャンプ監督とスレイトもクリエイターとして成長を続ける。キャンプ監督は本作がきっかけでディズニーアニメ『リロ&スティッチ』(02)の実写リメイク版の監督に抜擢。スレイトも実写・アニメ問わず出演作が目白押しで、第95回アカデミー賞作品賞に輝いた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(22)では犬を振り回しながらミシェル・ヨーと格闘。ルッソ兄弟の最新作『The Electric State』への声の出演も決まっている。

メディアのインタビューでは続編への意欲も!
メディアのインタビューでは続編への意欲も![c]2021 Marcel the Movie LLC. All rights reserved.

昨年のアメリカ公開時に現地メディア「Deadline」のインタビューに答えた2人は、まだマルセルと共に語りたい物語があることを明かし、さらなるシリーズ化への意欲ものぞかせていた。マルセルと同様YouTubeからスターダムを駆け上がった2人のクリエイターの今後にも注目しながら、まずはマルセルに会いに映画館に足を運んでほしい。

文/久保田 和馬

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