いまなお抜群の影響力!サイレント期ハリウッドのセックスシンボルとなった名女優セダ・バラって知ってる?
麗しいルックスや艶やかなオーラで人々を魅了し続けるハリウッドのセックスシンボルたち。そのなかでもサイレント映画期に人気を博し、現在公開中の『Pearl パール』でもその存在がほのめかされるなど、後世に多大なる影響をもたらしたセダ・バラという女優をご存知だろうか?
スタジオによってプロフィールを捏造された!?
1914年から1926年の間にハリウッド女優として活躍したセダ・バラ。もともと舞台で活動していた彼女は映画へと活動の場を移すと、『愚者ありき』(1915)での男を次々と破滅へと追い込むファムファタールなキャラクターが当たり、当時では珍しく遅めの30歳近くでのブレイクを果たす。
バラを妖婦路線で売りだしたいFOXスタジオは、本名のTheodosiaと祖母の名前Baraに由来するTheda Baraという芸名に“Arab Death(アラブの死)”のアナグラムという意味を持たせるなど画策。プロフィールも捏造し、フランス人芸術家とエジプト人の愛人の子としてサハラ砂漠で生まれ、超自然的な能力を持つとするなど、様々な設定でバラを演出したそうだ。
結果、スクリーン映えする大きな目が印象的なルックスなど、エキゾチックな雰囲気を活かし、男を惑わし食い物にする妖艶な女性を多く演じたバラは、ヴァンパイアを略した“ヴァンプ”の愛称で親しまれるほどの人気を獲得することとなった。
ギリギリの衣装で演じた色っぽいキャラクターたち
ブレイク作『愚者ありき』に加え、『カルメン』(1915)でのカルメン、『椿姫』(1917)でのマルグリット、『サロメ』(1918)でのサロメなど妖艶な魅力を活かし、ファムファタールな役どころを次々と演じたバラ。表情や演技もさることながら露出度の高いコスチュームを身に纏ったセクシーな姿で多くの人々を虜にした。
特にタイトルロールを演じた『クレオパトラ』(1917)では、透け感のあるドレスや胸の周りを蛇の装飾品が覆うほぼ裸といえるような姿まで披露。ゴージャスな衣装を見事に着こなし、世界三大美女の一人になりきってみせた。
『Pearl パール』でも重要な要素として登場
1926年に芸能界を引退するとその後ハリウッドに戻ることはなかったが、様々なカルチャーに多大な影響をもたらしたバラ。例えば、当時のポップソング「Rebecca Came Back From Mecca」には大胆な女性の象徴としてバラの名前が登場。また近年も「ダウントン・アビー」のなかで彼女の名が語られるなど、いまだにアイコンとして人気を誇っている。
さらに公開中の『Pearl パール』にも影響を与えている。本作は『X エックス』(22)に登場した老婆殺人鬼パールの若かりし日を描く前日譚。敬虔で厳しい母親と病気の父親と共にテキサスの人里離れた農場に暮らす少女パールがシリアルキラーへと変貌していく様子が描かれる。
物語の舞台となる1918年はバラが活躍していた時期であり、スクリーンの華やかなスターに憧れるパールがこっそり足を運ぶ映画館にはバラ主演の『クレオパトラ』のポスターが飾られている。また、パールがかわいがっている沼地のワニの名前は“セダ”。パールがバラにいかに憧れ、心酔しているかがわかるだろう。
さらにどこか気になる存在感で男を惹きつけて破滅へと導くパールの劇中での姿も、バラが演じてきた“妖女”とどこか被るようなところも。キャラクターの芯の部分にも大きな影響を感じることができる。
スタジオの火災により現存するフィルムは数えるほどしかないにもかかわらず、いまなお抜群の影響力を誇るセダ・バラ。彼女がいかに偉大な存在だったかが理解できるはずだ。
文/サンクレイオ翼