トム・クルーズの極み『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』、宮崎ワールドを通り抜ける『君たちはどう生きるか』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、凄腕エージェント、イーサン・ハントの活躍を描く「ミッション:インポッシブル」シリーズ第7弾、宮崎駿が10年ぶりにメガホンをとったジブリの長編アニメーション、圧倒的なチェスの強さを誇る男の過去に迫るヒューマン・サスペンスの、大きく物語が展開していく3本。
直球ど真ん中のエンタメ超大作…『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(公開中)
ハリウッドを代表するスパイアクション「M:I」シリーズ、待望の最新作がやってきた。IMFのイーサン・ハント(トム・クルーズ)と彼のチームは、世界を制する力を持つ危険なAIシステムを制御する鍵の争奪戦に巻き込まれる。2部作の前編にあたる今作は、鍵の奪い合いというシンプルな構造のためオープニングからアクション&スペクタクルの連続。高さ1200メートルの絶壁からバイクに乗ってジャンプする恒例の“命がけのスタント“はもちろんのこと、銃撃戦に追走劇、カーチェイス、格闘戦、脱出アクションと盛りだくさんで、どれもクライマックス級のスケールという贅沢さ。それでいて過度なやり過ぎ感のないバランス感覚はおみごとだ。
派手な見せ場だけでなく、若き日のイーサンと因縁のある宿敵ガブリエル(イーサイ・モラレス)とのだまし合い、仲間たちとのチームプレイ、イーサンとMI6出身のイルサ(レベッカ・ファーガソン)とのロマンチックなエピソードなどドラマ面も抜かりがない。旺盛なサービス精神で知られるトム・クルーズの極みというべき、直球ど真ん中のエンタメ超大作だ。(映画ライター・神武団四郎)
イメージの広がりは、これまでの宮崎作品でも最大級…『君たちはどう生きるか』(公開中)
宮崎駿監督、10年ぶりの新作である。第二次世界大戦中の日本。東京から田舎へと疎開した少年、牧眞人が、行方不明になった新しい母親を探すため、別世界へと旅に出る。ストーリーはシンプルだが、別世界へ行ってからのイメージの広がりは、これまでの宮崎作品でも最大級。眞人は様々な試練を導き手のアオサギと潜り抜けていくが、これが宮崎作品のあの場面、あのキャラクターを思わせる部分もあり、それを単純にリピートするのではなく、今回の映画の世界観として一つにまとめ上げているのはさすが。
いってみればこれは過去11作品の宮崎映画ワールドを通り抜け、新しい母親と少女の姿で現れる亡くなった生みの母親の二人に出逢った眞人が、「あなたは、これからどう生きるの」と問いかけられる物語。過去と現在の母親の間で揺れる眞人が、最終的にどんな生きる選択をするのか。彼の未来へつながるこの映画に、宮崎映画で初めて“おわり“の文字は出ない。(映画ライター・金澤誠)
主人公の全く異なる姿を完璧な役づくりで体現…『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』(公開中)
オーストリアのユダヤ人作家シュテファン・ツヴァイクが死の直前に手がけた、“命をかけてナチスに抗議した書“として知られる小説「チェスの話」を映画化。ゲシュタポによって拉致された公証人ヨーゼフ・バルトークが、1冊のチェス本を武器にナチスと繰り広げた壮絶な心理戦を活写したヒューマン・サスペンスだ。
洋上のチェスバトルと交互に映しだされるホテルでの監禁生活では、活字が徹底的に排除された部屋の窓は塞がれ、食事もワンパターンのみという単調な日々が繰り返されていく。感覚遮断という非人道的な拷問によって、文学をこよなく愛するバルトークが徐々に精神の均衡を崩していく様子はそら恐ろしく、泣き、叫び、恐れおののきながらも決して屈することのなかった彼の孤独な戦いから目が離せない。バルトークを演じたのは『帰ってきたヒトラー』(16)でヒトラーを演じたオリヴァー・マスッチ。美食家で恰幅のいい上流階級の知識人と、やせ細った深い悲しみを抱える男という主人公の全く異なる姿を完璧な役づくりで体現した。幻想と狂気の狭間をさすらいながらもバルトークが最後まで守りたかったものとは何だったのか?激しく心を揺さぶる最高にエモーショナルでスリリングな快作!(映画ライター・足立美由紀)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
※宮崎駿の「崎」は「たつさき」が正式表記