中野量太監督が「僕には撮れない映画」と嫉妬する若き才能も!「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2023」クロージング・セレモニーが開催
SKIPシティから世界へメッセージを届けたい!
国際コンペティション部門の審査委員長はアスミック・エース株式会社取締役で映画プロデューサーの豊島雅郎が、審査員を株式会社ロボット 映画プロデューサーの明石直弓、フランスの映画プロデューサー、パトリス・ネザンが務めた。受賞者はすべてビデオメッセージで受賞の喜びを伝えた。『助産師たち』で観客賞を受賞したレア・フェネール監督は「映画のように、心の距離が縮まることを願っています」とコメント。審査員特別賞にはノエミ・ヴェロニカ・サコニー『シックス・ウィークス』が輝き、サコニー監督と主演のカタリン・ロマーンのビデオメッセージが到着。ローマンは日本語で「ありがとう!」と挨拶し、サコニー監督は「たくさんの愛と労力を注いだ作品です。日本でプレミア上映できる機会をくれてありがとう」と感謝。審査員を務めたネザンは「ヒューマニズムの時間をシェアしてくださった監督にお礼を申し上げたい」とコメントしていた。
監督賞は『僕が見た夢』のパブロ・ソラルス監督が受賞。明石は監督賞選考について「完成度はもちろん、どんなチャレンジをしたのかがポイントにもなりました。『僕が見た夢』はシンプルな物語でありながら、演劇と映像を融合した形で描かれていて、登場人物が発する感情をリアルに捉えていて、監督の真摯な姿が滲み出ていました」と説明。「脚本は主人公を演じたルーカス(・フェロ)が携わったと聞きました。監督と俳優の絆による素晴らしい共同作業によって生まれた作品です。こうした作品作りが成功していることが今後の私自身の作品作りにも参考になったし、刺激にもなりました」と笑顔を見せ、「この映画が日本で上映され、たくさんの人が見てくれることを祈っています」と語った。
最優秀作品賞はレーゲル・アサド・カヤ監督の『この苗が育つ頃』が受賞した。審査委員長の豊島は「『この苗が育つ頃』のゲル・アサド・カヤ監督は国の事情、監督の信条から、来日は叶いませんでした。監督自身がなんとか世界にメッセージを届けたいという思いで、自らエントリーしています。こういうことが叶うのが映画というメディアであるということを誇りに思っています。SKIPが見つけた才能として、みんなで応援していきたいと思います。オンライン配信もあります。この作品を早めに観て世界に発信してください。誇っていただける作品です」とコメントした。
カヤ監督はシリア、クルディスタン地域ロジャヴァからビデオメッセージを発信。「戦争の物語が日本に届きました。カメラと物語を通して私たちのいまを世界に届けたいです」と語り、この受賞を「戦争が終わった時の素晴らしい日に捧げたいです。戦っている人々に捧げます。映画祭でみなさんと私たちの想いを共有できたこと、シリアからの声を届けられたことに感謝しています」と救急車のサイレンが鳴り響くなかで、メッセージを送っていた。
授賞式終了後、映画祭ディレクターの土川勉は「昨年の閉会式ではウクライナに1日も早く平和が訪れるようにと語りました。来年こそ、平和な世の中になるよう祈念しています。来年もここで会いましょう」と呼びかけ、実行委員会を代表してステージに上がった川口市長の奥ノ木信夫は「現時点で昨年を上回る7000人以上が来場しました。オンラインでの開催はまだまだ続きます。引き続き、デジタルシネマの魅力を存分に感じていただきたいです。来年も開催できること、新しい作品に出会えることを楽しみにしています」との挨拶でクロージング・セレモニーを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ