アイナ・ジ・エンド、“聖地”石巻で熱唱!岩井俊二監督は「奇跡のような出会い」と明かす
岩井俊二監督『キリエのうた』(10月13日公開)の舞台挨拶付き宮城限定試写会が8月23日、イオンシネマ石巻にて開催され、主演のアイナ・ジ・エンドが岩井監督とともに登壇した。
本作は、『スワロウテイル』(96)や『リリイ・シュシュのすべて』(01)でタッグを組んできた岩井監督と小林武史による音楽映画。壮絶な運命と無二の歌声を宿したアイナ演じる主人公、キリエの音楽がつなぐ13年に及ぶ壮大な愛の物語が描かれる。
アイナは本作で主題歌を歌唱するほか、劇中歌6曲を制作しパフォーマンスも披露している。ロケ地となった石巻市の印象について「とても穏やかな風が流れている場所。結構ぽっちゃりとした野良猫を見かけることも多くて、町の人が優しくしてくれているんだろうな、なんて想像していました」とにっこり。「見たことのない綺麗な花もすごく印象的で、またここに来れてすごくうれしいです」と伝えた。
仙台出身の岩井監督は「石巻はとても馴染みのある場所」とコメント。「昔、一緒に映画を撮っていた先輩が石巻出身で。実は夏彦のプロフィールはほぼその人からもらったものです」と、松村北斗(SixTONES)が演じるキャラクターの背景に触れる。「小林武史さんが携わっている『Reborn-Art Festival』にも参加しているので、石巻は何度も訪れています。故郷に帰ってきたような感覚で撮影させていただきました」と感謝すると、会場はあたたかい拍手に包まれた。
アイナを起用した理由は「偶然観た映像がきっかけ」と明かした岩井監督。「この子しかいない!」と直感的に思ったそうで、「まだ、その時は物語を書いている途中でした。アイナに寄せて書いていくうちに、どんどんスケールが大きくなりました。でも、アイナに歌い尽くしてもらうためには、これだけのスケールが必要だったんだと感じています」と唯一無二の歌声との出会いを“奇跡のよう”だと振り返った。
さらに、「歌声も身体表現もすばらしい」と太鼓判。自分が描こうとしていたキャラクターがここにいると直感的に重なったとも付け加えると、隣で聞いていたアイナは「恐縮でどんどん猫背になってしまいます…」と照れた様子を見せながらも、「(期待を裏切らぬよう)これからも頑張りたいです!」と意気込んでいた。
岩井監督の『PiCNiC』(96)が大好きだと話したアイナ。それまでは、映画を観ても監督までチェックすることはなかったそうで、「『PiCNiC』を観て、誰が作っているのか気になって検索しました。初めて検索した監督。興味を一歩先に連れて行ってくれた方です。監督という仕事があるのもそのときに知ったくらい特別な方に、主演に選んでいただけるなんて、夢なのか…うれしいの極みです」と満面の笑みを浮かべた。
イベントではファンからの質問を受け付けるコーナーも。「演技で一番難しかったところは?」という質問に「今回はいただいた役が恵まれていました」と答えたアイナ。「アイナ・ジ・エンドとしても自分自身としても自己肯定感が低い時代がありました。歌っている時は呼吸が楽になるという感覚も理解できます。まるで自分のような感覚もあったし、もはや…自分だったのかもしれません」と役柄とシンクロした経験を明かした。
イベント終盤には、アイナが主題歌「キリエ・憐れみの讃歌」を生歌で披露する場面も。主人公“Kyrie”からのサプライズパフォーマンスに、会場からは大きな拍手が湧き起こり、ホッとした表情を浮かべたアイナ。「よく、映画の舞台挨拶で『この日を迎えられてうれしく思います』というコメントを会場で聞いていたのですが、あれってガチなんですね。本当にみなさんに(映画を)観てもらえる日を迎えられてうれしいと思っています。そして、歌を聞いてもらえたことにもとても感動しています」とアイナが微笑むと、岩井監督が「”なんども、なんども“というフレーズが出てくるけれど、この映画もなんどもなんども足を運んでいただけるとうれしいです」と呼びかけ、大きな拍手を浴びながら、ロケ地、石巻でのスペシャルイベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ