岡田麿里監督、『アリスとテレスのまぼろし工場』で主題歌を担当した中島みゆきのメッセージに感激「毛穴が開きまくり」
変化を禁じられた町で暮らす少年少女の恋する衝動が世界を壊す様を描いた長編アニメーション『アリスとテレスのまぼろし工場』(9月15日公開)の舞台挨拶付きプレミア試写会が9月4日に新宿ピカデリーにて開催。声優の上田麗奈、久野美咲と岡田麿里監督が登壇した。
本作は、変化を禁じられた世界で、止められない“恋する衝動”を武器に、未来へともがく者たちの物語。製鉄所の爆発事故により出口を失い、時まで止まってしまった町で暮らす14歳の正宗を榎木淳弥が演じ、正宗の同級生・佐上睦実役を上田、謎の少女・五実役を久野が務める。なお、同舞台挨拶に登壇予定であった榎木は、新型コロナウイルスへの感染が確認されたため欠席となった。
前日まで編集作業の対応をしていたという岡田監督。変化を禁じられた町の設定が生まれた経緯を聞かれ、「私たちというか、世代もあるのかもしれないんですけど『変わっていくことがいいこと』『変わらないことはダメなこと』みたいに言われて育ってきたんですけど、でも、変わるということに対して、焦りみたいな部分とか、マイナスに思ってしまう気持ちとかもあった」と告白。
続けて「けれど、今こういう時代的にもなんとなく閉塞感を感じる中で、『変化ができない』ってこういうことなのかなとか、ちょっと思うようになってきまして。『変化って結構、勝手にしちゃうんだな』って思ったりしたんです。その辺を書いていけたらいいかなと思いました」と説明した。
そこで、変化を禁じられた町に行ってしまったらどうするかを聞かれた上田は「私はどちらかというと、ポジティブに受け取ってしまうかもしれない」とした上で、「それはうちに猫ちゃんがいるからだと思うんですけど、ずっと変わらずにずっと一緒にいられるんだったら幸せだなと」と回答。
一方、久野は「私は初めて脚本を読んだ時に、この世界観がとても息苦しく感じてしまったほうで…」と言い、「でも別にネガティブというわけではなく、私たちの日常でも、『本来望んでいる状況じゃないけど、安定して毎日暮らせているな』みたいな感覚って、誰しも感じながら生きていたりするのかなと思って。だからすごくスッと入れたというか、日常生活と重ねられる部分もあるなというふうに思いました」と答えた。
本作のキーワードになる「止められない“恋する衝動”」の話題では、上田が「『カフェイン摂りたい!』とか、日常的なことだとあったりします」と自身の止められない衝動を告白。次に、作品の感想を聞かれると「『恋っていいな』と、やっぱり思いました。もどかしいなとか、苦しいなとか、そういうものも見ていてすごく感じた」としつつ、「それがあるから世界が変わる、という言い方で難を逃れますかね(笑)」とネタバレに配慮しながら伝えた。
久野は「最後まで五実を演じたからこそ、自分の人生と重ね合わせられた瞬間もあったりした」と収録を回顧。そして「でもそれって演じた私だけじゃなくて、もしかしたらご覧になる皆さんもそういう瞬間を味わえるのがこの作品なんじゃないかなと思います」とコメントした。
また、本作の主題歌「心音(しんおん)」を歌う中島みゆきからは音声メッセージが寄せられ、「アニメーションの世界と中島みゆきという組み合わせは、なんだか異種格闘技みたいな気がするんですけど、その辺の“びっくり感”も含めてお客様に楽しんでいただけたらとっても嬉しいです」「中島はとにかくもう岡田様を尊敬申し上げておりますので、映画の完成を期待に満ち満ちてお待ちしているところです」と伝えられると、一同は感激。岡田監督は「毛穴が開きまくって(笑)。ありがとうございます、本当に。本当にすごい良い曲なんですよ」と興奮気味に感謝を口にしていた。
取材・文/山田健史