『パウ・パトロール』劇場版最新作が、前作超えの大ヒットスタート!
9月最終週の北米興収ランキングは、大きな新作タイトルが一気に3本公開されたことで、閑散週末となった前週から一気に持ち直す。トップ10作品の合計興収で比較すると、前週比は183.9%。上げ幅の大きさだけでみれば『アントマン&ワスプ:クアントマニア』(23)や『バービー』(23)、『ザ・スーパーマリオブラザース・ムービー』(23)の公開週末に次ぐ2023年の第4位ということになる。
そんな週末に起きたビッグサプライズは2つ。一つ目は、カナダ生まれの幼児向け人気アニメ「パウ・パトロール」の劇場版最新作『パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー』(12月15日日本公開)が、三つ巴を制して首位デビューを飾ったこと。3989館で公開され、週末3日間で2276万ドルを記録。前作『パウ・パトロール ザ・ムービー』(21)はコロナ禍の影響が残るタイミングでの公開だったこともあり、オープニング興収1314万ドルで北米累計興収は4000万ドル。今回は8日までですでに3800万ドル以上の興収を記録しており、前作を大幅に上回ることは間違いない。
意外にも幼児/児童向けカートゥーンアニメの劇場版が首位デビューを飾ることは珍しく、ざっと調べる限りコロナ禍まっただなかに公開された『スポンジ・ボブ: スポンジ・オン・ザ・ラン』(20)以来。とはいえ同作の場合はアニメーションのタッチが変更されていたり、実写とのハイブリッドであったりと少々例外。それより前では『アングリー・バード』(16)があり、さらにその前となると『ラグラッツ・ムービー』(98)まで遡ることになるだろう。
一方、2位でスタートとなったのは、2024年にシリーズ開始から20年を迎える「ソウ」シリーズの第10作『Saw X』。週末3日間の興収は1830万ドルで、平日のデイリー興収では『パウ・パトロール』を上回ることに成功。シリーズ前作『スパイラル:ソウ オールリセット』(21)は公開時期的に参考外だが、その前の『ジグソウ:ソウ・レガシー』(18)がオープニング興収1664万ドルで、最終興収3805万ドル。シリーズとしての旬は過ぎた印象が強いが、ここにきて持ち直し傾向にあるようだ。
そんな『Saw X』の批評の良さが、もうひとつのビックサプライズだ。これまでの「ソウ」シリーズといえば軒並み低評価が続いており、批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は1作目の50%を2作目以降で一度も超えることができず、7作目では9%という目も当てられないスコアを叩き出していた。ところが今回、同サイトでの批評家からの好意的評価の割合は83%。観客からのそれも90%と、シリーズ最高を大幅に更新。いったいなにが起きているのか、俄然本作の公開が待ち遠しくなった。
そして、ギャレス・エドワーズ監督の『ザ・クリエイター/創造者』(10月20日日本公開)は、批評面でも興収面でも先述の2作の後塵を拝する結果となり、3日間興収1400万ドルで3位スタート。上位3作品がまるっと入れ替わるのは、北米中の映画館がコロナ禍での休業から再開して以降初めて。また、5位に『The Blind』がランクインしたことで、上位5作品中4作品が初登場。これは2021年末以来のこととなった。
文/久保田 和馬