宮沢りえが映画『月』出演の経緯を説明「逃げたくないという気持ちで参加した」
10月14日、新宿バルト9にて、映画『月』の公開記念舞台挨拶が行われ、宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョー、石井裕也監督が登壇した。
本作は、実際の障害者殺傷事件を題材にした辺見庸による同名小説を原作に、『茜色に焼かれる』(21)の石井裕也監督が映画化したもの。重度障害者施設で働き始めた元・作家の堂島洋子(宮沢りえ)が、職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにし、それを訴えるが聞き入れてもらえず…。社会が、そして個人が問題に対して“見て見ぬふり”をしてきた現実を捉えた作品となっている。
本作に、ただならぬ覚悟で参加した出演者たち。宮沢は、出演に至った経緯について「(エグゼクティブプロデューサー、企画の)河村光庸さんが撮影直前にお亡くなりになられたんですけども、河村さんと最初にお会いしたときに、この映画についての熱意をうかがって。平和なのか、殺伐としたこの今の世の中。日本だけではなくて、この地球上でいろんなことが起きていて。生きていくために保身してしまう自分に対して、もどかしさがあったりして。この作品を通して、そのもどかしさを乗り越えたいという気持ちがすごく強くなって、内容的に賛否両論ある作品になるだろうなと思いましたけど、ここから逃げたくないという気持ちで参加しました」とコメント。
作品については「生きていくなかで見たくないものとか、聞きたくないこととか、触れたくないものがゴロゴロあって。そのフタを開けるということはすごく勇気やエネルギーがいることだし、そのフタを開けて、中にあるものと向き合ったとき、決してポジティブなものではないかもしれないけれど、そうした中から考えるきっかけ、話し合うきっかけになるような映画ではあってほしいですし、皆さんの記憶にベッタリこびりつく作品として広がっていってほしい」と、自身の想いを語った。
また、石井監督は「なんらかの理由で告発できない、声が上げられない、閉鎖された空間でいろんなことが起こり、それに対して隠ぺいするというのは、障害者施設だけの話ではない。むしろ、僕たちが暮らしている身近なところでの世界の話。自分たちの人生にもつながってくる話。そこを意識して書きました」と、脚本に込めた想いを語っていた。
取材・文/平井あゆみ